裏庭で一度は撃破したものの、天蓋庭園ではネクターの力によるものか、本人が言うとおり力を取り戻したのか……。
兎も角、手も足も出なかった。

万全の状態でそれである。いま、傍らにグッドボーイは居ない。
社長に連れられて天蓋を歩いているはずだ。

その交渉が行われた時、バッドボーイは眠ってしまっていた。
起きてからその一部始終を話したところ、バッドボーイは不機嫌そうに何かを考え込み始めた。
そして今……どうにも、この状況が気に入らないらしく、突っかかるような言動をしてくる。

社長が裏切ることは、ありえない。
信頼とはそういうことだからだ。仲間とはそういうものだからだ。
自分に今できる事は死なずに合流の日までを生き延びることだ。
持てる金の全てを社長に渡し、素寒貧だが、手持ちの食材にはまだ余裕がある。問題はない。



もし今、切り捨てられたらおれはどうなる？



戦力はほぼ皆無。
追いかけることすら困難で、捕まえることも抵抗することもできないだろう。
仲間が居なければどうしようもないほどに、弱体化してしまっている。
だというのに、現れる敵は日増しに強くなっていく。
いずれ、溺れてしまう。どこに行っても勝てなくなる。

その先に待つのは、戦死か、餓死だろう。

通話用のフェアリーを呼び出し、社長へと繋ぐ。
しかし、いくら声をかけども、返答はなかった。

知っている。
もし今、自分が切り捨てられていたとしたら、もう生き延びることはできないことを。
信頼に縋らなければ、マトモじゃ居られない程に追い詰められていることを。

今日勝てなければ、明日は更にきつくなる。

社長の部屋には誰も居なかった。
他の住人たちにも聞いてみたが、誰もが今日は見ていないと答える。

社長の行方が掴めないまま、一日が経過した。
まだ、期日内だ。大丈夫だ、そう自分に言い聞かせ続ける。