少し焼け落ちたマフラーをなぞる。


力で優っている相手に対して力押しを仕掛けるなんて、無謀・無策を越して無意味ですらある。
それでもあたしは勝たねばならなかった。
殺したいと、上回りたいと願う、いや違う願うじゃない、そうならなくてはならない相手。
あの魔女より遥かに上の存在。姉さんを見据えるからには。


マフラーの先を指に絡める。


足取り重く、この反乱の最前線であるらしい天蓋庭園とやらに向かう。
一揆とやらがどうなろうと興味はないが、この一帯……ネクターとかいう、この世界のエネルギー源に溢れている。
これを大量に取り込んで魔力の底上げを図る。
まるでドーピングね、と自嘲する。妹の声が聞こえてきそうだ。



マフラーの焼け焦げた部分を指の腹で押してみる。ちりちりした感触。
姉さんからのプレゼント。気に入ってたのにな。

　　　　　　　　思わず自然に笑みがこぼれた。その時が楽しみだ、と。

　　　　　　　　だが少しだけ見えてきた気がする。
　　　　　　　家系を大切にすればこそ、許せない者もあるのだろう――殺したい程に。

　　　　　　　　武運を。
　　　　　　　去りゆく女に聞こえぬよう小さく、その背中に投げかけた。
　　　　　　　横に並んで共に闘うことすらもできない己自身の弱さが、
　　　　　　　握った手の隙間から赤い滴となってこぼれて落ちた。