彼、狼のジーヴはいつも明るくて、しっかりしていて、
嫌な過去なんて持っていない。それを消したのだ。
だけど僕、エメリー＝ロイドは違う。
僕は11歳のまま5年が過ぎた子ども。そして皆の前で暴れたので、
未だに暗い部屋の中で閉じ込められている。
朝が来るまで怖くて眠れなかった。
その後、僕は狼の毛皮を身に着け、強い狼であるジーヴのふりをして、
何とかそこから出られたと思っている。
本当のところ、そうではない。
まわりに誰もいない時、もしくは暗い夜の時、ふと寂しくなって
部屋に閉じ込められていることを思い出す。

ある時、閉じ込められた僕は赤くて小さな明かりを一緒に思い出した。
そんな明かりのような人がいた。
照らされた部屋には家族の思い出の品がたくさん置いてあった。
初めは怖くて見るのも嫌だったけれど、次第に懐かしく思えるようになった。
僕はそんな明かりに出会えたのが嬉しくて、たくさん油を足してしまった。
すると次第に火は大きくなり、僕も、閉じ込めていた部屋も、
大事な狼の毛皮も、全て焼いてしまった。
後に残ったのは燃えかすと、火傷の痛みだった。
馬鹿なことだと思っているのに、僕は焦げて小さくなった毛皮を纏い、
真っ赤に痛む手で、燃えたものを集めようとした。
さっさと諦めてしまえばいいのに。

その灰は並べられた言葉で、探しているものはそれに隠された真実。

彼女を守る「父親」に会った。

マナは幻のように、半透明のまま宙をふよふよ浮いている。

そんなことを言いながらトカゲが泥闇に溶け、人型に戻る。

　　　　ピクッ…