『　お祖父様。あなたが遠くで手を振っている夢を視ました。
　あれからお元気にしていらっしゃるでしょうか。

　一度は世界を繋ぐらしい電話を使ってお声を聞こうかとも考えていましたが、
　貴方のことでしょうからそういったことはお見通しでしょう。
　そうです、直接逢って訊きたいことなので、それは今度逢った時にお話します。　』

　――不死王は火を浴びて呆気無く灰塵と化した。
　けれどもあれは幾度も黄泉帰るのだろう。
　このメルンや他の世界にも、そういった類の生き長らえる種は居ると聞く。

　あれとは違う。私はただの、この場合私の世界にとっての常識だが――
　まあ、呆気無く死ぬだろう。その先があるかは知らない。
　神の国については興味はあるが半信半疑だ。

　ただ、
　（ここで筆が止まっている）

　ナスルの発言に先に反応したのは意外にもコノエだった。
　文字通り頭を抱えて、表現するならばOH……という擬音を出しているような風情だ。

　強火の場合も鍋の底から火がはみ出ない程度にね、と優しく諭すのだった。

　ナスルの苦笑には好きでやってるんだからと微笑み返す。
　より必要な人の場所にあればこそ、物は輝くのだからと。

　ね、とコノエを仰ぎ見る。コノエは保障するように頷いてみせた。

　第二の故郷を作るだけで、捨てるわけじゃないでしょう？　とアラトは優しく目を細めて手を伸ばす。
　嫌がられなければナスルの髪を優しく撫で梳くことだろう。

　あとは温泉卵とか。とナスルの胃袋をつついてみるのであった。

　キャンキャンと真っ赤になった女王が吠える後ろでコノエが肩を震わせている。

　ナスルのウィンクに花の咲くような笑顔を返した。

必死に周囲を仰ぐブリジットを見て、小さく何かを呟いた。
どうやら刺青に働きかけたらしい、雪光の体が淡い青色の光を纏う

心なしか土の匂いが濃くなり、煙が薄くなった気がする。

しょげる術師を見て、流石に言い過ぎたと
ばつが悪そうに頭を掻きながら

妙に白い貌の男が芝居がかった仕草で一礼した。
そして貴方の姿を数秒眺め、ほうと感心したように頷く。

ナスルの「甘え過ぎだ」という言葉と仕草に、つい笑みが溢れてしまう。

どこか照れ臭そうにそう言って、目を逸らした。

返答に困った様子で、しかし短く礼を述べた。

機会があったらこいつに尻尾の肉でも食わせてやろうか、
という考えが一瞬頭に浮かんだが、冷静さが瞬時にそれを打ち消し。

どこか他人事のように、笑ってみせた。

ぼんやりとした口ぶりで、そう返答した。

　ナスルははっと顔を上げて小さく頷く。
　

　ナスルはもはや勿体ぶった素振りも見せず、
　自宅の扉を開ける気軽さで箱の蓋を開けた。