本当にそう考えていたの？　との 少年の詰問に、
気まずそうな表情を浮かべて呻き、渋々と頷く。思慮の浅さを咎められている、子供の様な顔。

追及の問いの中、黒猫の少年を利用していたのではないか との疑いの言葉を聞き取り、慌てて否定しようとする。
しかし、続く どうしてやろうか… との一言に慄き、声が途切れ、びくりと身体を震わせる。

けれど、考えすぎだった… と話す彼の口調から、
悪意はなかったことを汲み取って貰えたと思い、安堵の息をつく。


とはいえ、鼠の少年の語り口から、己の浅薄さを思い知らされ、
やりどころのない劣等感を持て甘す。少し拗ねたような、不服げな様子ではあったが…

苦々しく付け加えられた少年の一言に…　思わず、目を逸らした。

次いで少年から投げかけられた、王の無思慮なネクター簒奪への疑問。
気恥ずかしい気持ちを誤魔化すように、急ぎ応じる。

最後の方は 戸惑いながら、答える。

一揆が成就すれば、すぐに平穏な日々に戻るだろうとの願いも虚しく、
混沌の渦に呑まれてしまった現実を、認められないような、認めたくはないような…認識の齟齬。


他の分割世界にまで救援要請を出したのは何故かとの問いには…

エンブリオに任せた理由が解る と言われ、ホッとしつつも…
内向的な性格を見透かされてしまった事に、ちょっとしょげる。

確認くらいすれば？ と言われ…

正体に話が及ぶと、苦笑いを浮かべて…

独占を止めただけでは収まりはしない との少年の話に、言葉を失う。

話の内容を、否定することも、肯定することもできず…　ただ、押し黙るばかり。

ようやく、それだけを話す。当惑の混じった、声で。








顔を背けて俯き、胸に手を当て、何かを堪えているようにも見えた少年の姿。
その呟き…　呻くようにも聞こえたその声に、心を呑まれ…

そして、しばらく間をおいた後。

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天蓋庭園の一角。ようやく現れた鼠の少年を見るや否や、驚き まごついた声が漏れる。
約束の時刻を過ぎた理由を気にかけるよりも先に、赤と緑に染まった少年の、異様とも思える姿に意識が向かった。

遅れた非を簡素に詫びた彼に、依頼の品を手渡す。

品を受け取るその姿に、何かふと ぎこちなさを感じ、話しかけようとしたものの、
作業を始めた彼に声をかけるのが躊躇われ、思い留まる。



作業を終え「それじゃあ」と素っ気無く立ち去る彼を、言葉少なく 見送る。
けれど…

ネクターの香りに混じた血の臭いを嗅ぎ分け、反射的に言葉をかけた。