おうさま。
このいっきがはじまったきっかけ。

だいがかわってあたらしいおうさまは、ネクターとよばれるはなをひとりじめしました。
エンブリオとけいやくしてそのちからをかりることでゆたかになったこのせかいのひとたち。
エンブリオとのけいやくにはネクターがひつようだからこそ、そんなたいせつなものをひとりじめするかってなおうさまにおこってこのおしろにせめこむことになったのです。


そのおうさまがめのまえにいます。


さいごの、もくてき。ここで、おわらせる。
猫は、ゆっくりとかまえました。


とたん、おうさまからかんじとったすさまじいけはい。
このかんかくはまえにもかんじたことがありました。

それは、ひとかりにおそわれたとき。
――さっきとよばれるもの。

猫がぶきをかまえたことによって、おうさまはてきとりかいしたのでしょう。







はっきりいってとても――こわい。
にげだしたい。
こんなおそろしいあいてにじぶんはたたかいをいどんでいたなんて。

がくがくとひざがわらってしまって、しりもちをつきました。
と、うしろのだれかにぶつかりました。


だれか？
かんがえるまでもなく、それはセリィおねえさん。







そうだ。
めのまえのおうさまはみんなを――セリィおねえさんを、こまらせている。

にげちゃだめだ。たたかうんだ。
じぶんは、セリィおねえさんのヒーローになるんだ。



ここにくるまでにかるいきゅうけいをとりましたが、おねえさんはつかれているのか、あまりげんきがなさそうで、こころなしかけづやもよくないようにおもえました。
もしかしたら、ぐあいがわるいのかもしれません。

そういえば、もうひとり――いっしょにたたかうらしいおとなのおとこのひとがいっていました。
ネクターがあつまってごかんをゆがめるめいろをつくりだしている、と。
もしかしたら、そのせいでおねえさんのぐあいがよくないのかもしれません。

だったら、なおさらじぶんががんばらないと。
たとえ――ちからおよばずとも、すこしでもセリィおねえさんのたてに。





もう、ふるえはとまっていました。
猫はひざをたたくと、じめんをしっかりふみしめて、たちあがりました。

ネクターの大樹に埋もれた王の、あまりに歪な容貌に狼狽し、
言葉もなく ただその姿を見つめる。