サヤが以前に話していた、オズの魔法使いというおはなし。
　そのおはなしの中では、“エメラルドの都”という場所がある。
　建物も、廊下も、水も空もすべてエメラルドの輝きに満ちた、きれいで豊かな場所だという。

　それはもちろん、おはなしの、おとぎはなしの中の世界。
　だけど、その常盤色の輝きを、紅緋へと変えたのならば。

　――きっと、こんな風景、なんだろうか。


　赫い空、赫い大地。
　ときおり舞い散り風に乗る、赫のカケラ。

　ほんとうに空も大地も赫、というわけじゃない。
　ただ一面、本当に一面、ネクターの赤が生い茂り、覆われている。

　いや、ただの赤じゃない。
　明々と燃えるような、強い輝きをたたえている、いわばいのちの赫だ。


　――天蓋庭園。


　遠くに、大きな樹が見える、大きな赫い空の広がる、庭園。

　まっとうな道筋なら行き方なら、もちろん来れるべくもないその奥地。
　そこに、あるものたちに案内されて、ボクらはきていた。
　あるものたち――律法騎士団。ステンドグラスに圧倒される大礼拝堂で襲ってきた、彼女らだ。


　案内されて……どころか、その目的は互いの手を取り共闘のため。
　おうさまに、パラダイス様と、対峙するために。

　ハタからみたらおどろかれること、なのかもしれない。
　たがいに殺し合ったりけん制したり、実際した、そんな一団。
　ただボクら／彼女らにしてみたら、ふしぎでも何でもないハナシ。


　――ただ、はなしは、あと。
　いろんないみで。


　先に大樹の前にいた、緑が口から言の葉を紡げば、大樹がざわめく。
　無言で、赫が広がる――。