『――つまり、小生は……セバスチャンのごしゅじんさまのこどもってことなのです？』


「はい・・・・・半分は、ですが。」


『もうはんぶんは、そのこどものともだちのあくまのえんぶりお………それが、小生……？』


「ええ。リク坊ちゃんとロクが何らかの事故で掛け合わさった存在・・・・・それが貴方です。
そう考えて間違いないでしょう。」


『………。』


セバスチャンからすべてをきかされた猫。
そのこころのうちはとてもふくざつでした。

ひとのてによってうみだされた、にんげんとあくまのまざりもの。
そのことじたいは、サタンさまによってすでにわかっていたことでした。


うしなわれたむかしのきおくがわかったことはきっとよろこばしいことなんだろう。
でも――


『わから、ないのです…』


すべてをきかされたいまでも、なにもおもいだせない。


『ほんとうに、小生は「リク」と「ロク」なのです？』


どっちのきおくももっていないのに？
むしろ――


『――セバスチャンのいうリクってこも、あくまのロクもほんものはきっとほかにいて、小生はそのいちぶでつくりだされた、じっけんようの「にんぎょう」なんじゃ…』


「坊ちゃん！」


そのかんがえは、きびしいこえのセバスチャンにおしとめられました。


「旦那様がそういった事はなさっておりませんでしたが・・・・・確かに私が館を離れた後を知るすべはありません。
ですが――今の坊ちゃんは間違いなく人形などではありません。」


「だな。こんな喧しい人形がいてたまるかってんだ。
こんなに良く泣いて、怒って、笑う人形なんかいねェよ。おめぇは人形なんかじゃねェ。」


「そうだよっ！！
ロクといっしょにいるとね、きもちがあったかくなるもん。にんぎょうじゃかんじないよ？」


『セバスチャン…ししょー…シュテルン…』


そのあたたかさがわかったから。


『――だいじょうぶなのです。みんなにだっていつもいってきたのです。小生は小生だって。』


そう、にんげんのリクとかあくまのロクとかかんけいない。
じぶんがどんなそんざいだなんて、そんなのかんけいない。
このいっきでつくりあげてきたきずなはまちがいなくじぶんのもの。


『だから、小生は小生のしたいようにするのです！』


いまは、みんなの――セリィおねえさんをこまらせるおうさまをなんとかしたい。
それが、いまの猫のやりたいこと。








「ただ、今の坊ちゃんの存在を知った旦那様が何をなさるかはわかりません。そのことをどうか心に留め置いておきますよう――」

苦笑しつつ、何かを思い出しながら。

再び符を取り出し

「とっくん」がどんなことをすればいいのか問いかけられ、
ロク＝リクくんに期待のこもった眼で見つめられると、
ブルーノおにいさんは首を捻りました。

ヤンキーみたいな怖いナリをしている割に、
おにいさんは丁寧に、考えを教えてくれました。

ブルーノおにいさんは目をぱちくりさせ、
しかし、次の瞬間にはにっこりと、大きな口を緩ませて微笑んでいました。

おにいさんは再度、にっこりと笑うと、
ロクくんの頭をぽふぽふと撫でようとします。

おにいさんは頷くと、嬉しそうに言いました。

ロクにぴったりくっついて休んでるシロちゃん。
お互いの体温が伝わってきて、暖かく幸せな気持ちになる。

お友達と遊ぶのが大好きなシロちゃん。大変楽しそうです。

肩を支えたまま、そっとロクの頭に手を置いた。

すっかり燃えカスになったかと思われたラピスが、突然膨れ上がり、ポップコーンよろしく弾け飛ぶんだ。

自分でも思いつかなかったようで、首を傾げた。

何故か涎を溢れさせんばかりに緩んだ顔で鼻息荒くなった。

フッ、とニヒルな笑みを浮かべ、

と小声で呟いて、ロクの前から立ち去った。
そしてやや離れたところで、「完！　俺たちの戦いはこれからだ！」と書かれた札を立てた。

猫の少年の、秘密の依頼に再びやって来た狐。

とっても助かってるのです！と、にぱっ☆ と笑顔で お礼の魔法石を手渡す。

猫の少年から品物を受け取り、その丁寧な仕事ぶりに感心する狐。

メッセージカードと共に 狐が菓子箱から取り出したのは、大きめのデザートグラス。
グラスの中に、赤・黄・白の3つ層が 鮮やかな色彩で盛り付けられており、
その上にスライスしたアーモンドが散らされている。

ネクターの花の陰から、彼女はその姿を見せた。

ぐっと、強く、拳を握り締めた。