降伏勧告を受け入れる。
　お館様は左大臣にそう伝えた後、御殿の大広間に家臣を集めて通達した。


「そんなもの、受け入れる事はございません。我ら最期の一兵となろうとも、お館様の為に散る覚悟であります！！　」

「ご命令いただければ、逆に京の都に攻め上り、お館様をこの国の王に据える礎となります！！　」

「我らの命などの為に、お館様の野望を曲げてしまうなど、決してあってはならぬ事」


　皆、一様にざわめき、口々に考えを改めるようにお館様に詰め寄る。


「お前らの武も忠義もわしは微塵も疑ってはおらぬ」


　熱狂する家臣達とはうらはらに、お館様はいつもと変わらぬ涼しい、だが、強い意志のこもった表情で皆の意見を跳ねのける。

「だが、これはこの国の為。お前達には将来この国を背負って立って欲しい」

　いつもはお館様の言う事を疑う事など無い大江山の住人も、この時ばかりはなかなか納得せず、入れ代わり立ち代わり、手を変え品を変え、三日三晩お館様の説得に当たったが、とうとうお館様が首を縦に振る事は無かった。



「……お館様が決めた事に逆らうわけ？　」

「……お前らが来なんだら、お館様が乱心する事も無かった」

　左大臣は降伏受け入れの為に都へと先にお帰ししたものの、ツナちゃんは大江山に留まった。

　いつか来るだろうとは思っていたものの、鬼気迫る表情をしたライチがツナちゃんに詰め寄ってきた。

「今更ツナちゃんをどうこうしたところで……ツナちゃんがやっぱりやめようって説得したところでお館様が考えを改めるわけ無いだろうに」

「あれだけお館様に恩を受けておきながら、仇で返そうとは！！　」

　ライチは既に理屈が通じない次元にまで怒りが高まってしまっているようだった。

「……で、許さなかったらどうすんのさ」

「立ち会え……皆の前で立ち会え！！　」

　まぁ、皆の前でツナちゃんを切り捨てれば、少しは皆の溜飲も下がるかも？　
　結局事情は少しも変化しないと思うけどさ。

「はいはい、じゃあ相手になってやるよ」

ダッと近づき手を握り、ぶんぶんと思い切り振り回す。

　　　　　　　さらにホームレス度が上がった！

　　　　　　　　否。仮に時代がどうで、彼女がオープンマインドだとしてもだ。
　　　　　　　あの片方の腕はインパクトあるだろう。
　　　　　　　慣れてしまえばどうということはないが、大概は壁になる。悲しいかな、それが現実。