見えてきたのは、黒にも近しい灰色の空模様。重いとはっきり分かる空気が雨が近いことを知らせていました。
はぁ、と少女はため息をつきました。ここは三つ目の『我が家』ですが、雨には決して強くはありません。
自分が人間で無ければと夢想しました。人としては小さなサイズの体躯でも、雨を凌ぐにはそれなりの場所が要ります。
空を飛べない自分、後ろ向きな心、状況を解決出来ないちっぽけな手。小娘が生きていくのは自分だけでは出来ません、人として暮らすにはそれなりの場所が要りました。
行くか、と。荷物を纏めて、少女は木のうろから這い出しました。ここからなら、家に戻る他無いでしょう。

　あめがふりそう。少女は鼻を動かし、空を見て、風を感じてそれを知りました。
んー、ここだとにもつもまとめてざーっとあめにふられます？　ここは森の中、ちょっとの雨なら木がふせいでくれます。
どこが近いかな、お金は大丈夫かな、あれこれ思いをめぐらせて。幸いながらここから程近く、泊まれそうなところの心当たりがありました。
いこー！　雨が降るまでに、少女は鼻歌を歌いながら歩き出しました。何、ちょっとくらい雨に濡れたって平気でしょう。

　
ここに思いっきり下界食べ歩きしてる天使も居るが。