御殿の一番奥の間で、ツナちゃんはお館様と向かい合って交渉に臨んでいた。
　この場にいるのはお館様とツナちゃんの他にはたったの２人。
　らいちが護衛に残るとしつこく言っていたものの、お館様以外は帯刀していないのと、たとえ何があってもお館様なら容易く切り抜けられるというお館様の主張で、しぶしぶと引き下がっていった。

「ふむ……」

　お館様が唐の国伝来の茶葉で淹れたお茶と、やはり唐の国の焼き物で作られた湯のみで茶を啜る。

「すぐに結論というわけにもいきませんでしょう……我々は一度都に戻りたいと思います」

　交渉の条件を提示し、恭しくお館様に頭を垂れる左大臣を横目に、ツナちゃんも慌てて首を垂れる。

　左大臣と言えば要職中の要職。

　普段であれば都を離れるなどととんでもない話なんだけど、その人の供としてツナちゃんはこの場に同席している。

「いや、決断は今しよう」

　お館様の宣言に場の空気が引き締まる。

　即断という事であれば、今回の件は破談であろう。
　そうなれば次に切り捨てられるのも覚悟しなければならない。
　左大臣だけでも逃がせないかと思考を巡らせるが、ここは敵陣深く……とてもそんなチャンスは無いだろう。

「降伏勧告を受け入れる」

見た目だけならこっちも少女なんだけど年齢的にはルリアンナすら少女扱いでしょうね

くっくっ、と笑い。

　ぴおはこのばしょへのみち（という名の危険な歩行を）こころにきざみこんだ。

　聞き逃したのは自分が悪いので、聞きなおします。
この場の雰囲気など知ったこっちゃないとばかりに。

　今まで『暇な時に来てくれ』だなんて言われた事は無いのでちょっとびっくり。