手はそのままずるずると地面の中にまで潜り込み、ユーリィーの首から下が地面に埋没した時点で魔法が解除されて元の地面へと戻る。
逃げられなければ、顔だけが地面から生えている状態である。
腕は結構な力であり、力づくで逃げるとなるとオーガを片手で薙ぎ倒せるくらいの力は必須だろう。
魔法の構造は単純なので、それよりは魔法を解除した方が楽に逃げられそうである。

……さて。丸太の下敷きになって数分後。
丸太のしたから「せぇの……」という掛け声が聞こえ、直後。

勇ましい声と共に丸太が空へと飛び上がり、数秒後に地面へ轟音を立てながら突き刺さる。
蹴り上げた時のまま、両脚を空高くへと突き上げた体勢のフィーグルは、己の真上から障害物が排除されたのを見届けるや、両脚を勢いよく地面へと倒し、その反動で一息に起き上がる。
パンパン、と服についた土埃を掃えば、嘆息しつつ一言。

ダブルトラップの可能性を考えなかったのは、間違いなく己の落ち度である。
魔王を名乗る少女は真摯に考え足らずだった事を恥じ入ると、その場に残っていればユーリィーへ。いなければ去った方向へと視線を向けて。

（どうやら、それはそれと受け入れて納得してしまったようだ）

（穏やかな笑みを見せた）

（小さく頷いて、そっとユーリの頭でも撫でようとしてくるが…？）

（なんだか、彼女自身もどこか戸惑っている様な感じを受け、そう申し出るが…）

（今度は帽子を取らずに顔を顰めてさすっているが…
これもネタ、だろうか…？）

（暫し思案した後、ニッコリ笑ってどこかで聞いたようなセリフを）

（また一つの新たな事実に、興味をひかれている）

（彼女の様子に、心底同情しているようだ。
何故その手の連中は、毎度毎度同じ様な事しか考えないのか…渋い顔）

（紅茶を２人分カップに注げば、片方を差し出して。
丁度チーズケーキも２人分には十分だ）

シルフは照れている。