王 un roiと法 une loi 。男の名辞と女の名辞。王は男で法は女。相似を裏切るロワとロワの性差が唇の幕裏に転がるのを時には楽しんだ。ロワとロワ。鼻の奥で鳴るのが王、歯の裏で鳴るのが法。王はより密やかな暗所に息づき、法は門歯のすぐ後ろに哨戒する。王は法をつくるが、法は王の死後にも続く。法なしに人は生きられないからだ。罰則なしには、禁忌なしには、抑圧なしには……そしてそれらの角を矯める枠木がかろうじて形づくる《自由》の似姿なしには。

牛乳をとれるようにするのさ。牛たちを柵のなかに押し込めて、設備を整えて、乳を熱で殺菌する。何年かしてからその世界を訪れる。子供の数がまるで違う。嬰児死亡率はたったひとつの牛乳工場で劇的に変わる。それもまたひとつの革命であり、そこにもまたひとつの法がある。支配がある。家畜たちを抑圧し、菌類を虐殺し、私たちは革命の子供たちを育てる。ひとつの王を殺すなら、次の法が生まれなくてはならない。革命は逃れがたく法を希求し、法に呼びかける。そこには時に呼び違えられて王が現れる。

革命は多様性の解放ではない。また別の単一性が支配として劇場に現れる。ただ《革命が起こる》その火花のような一瞬だけは、世界は多様性に対して開かれている。革命は支配する……革命は新たな革命に打倒されうるという、その永遠の約束だけを救済として留保したまま。

だから革命は常に法を抱き、法と対峙する。戦士たちの雑踏にこだまするロワとロワのそのなかに聞き違えられて溶け合うやわらかな性差を聞き分けながら。

ふと首を捻りポキポキ音を鳴らした。

シャリン――、シャリン――
　どこからともなく音がする。

　　　シャリン――、シャリン――
　　　　それは、だんだん近づいてきている、そんな気がする。