感嘆しかもらせず、いろんな思考が頭の中をかけめぐってゆく。
記憶喪失……とは言うが、以前にも、全く性格が変わった人も何度も見ている。
そういう類なのかな、と思いつつも、彼女の顔はやはりヘリヤ＝イブリスそのもの。
だが、纏う雰囲気がはやり違う……が何かまではわからない。
そこまで考えて、思考を切り替える。

身なりの良い少女が挨拶をしてきた。
服装からして高貴な印象を受ける。
その少女は黄金色の頭髪に透き通るような白い肌。
そして幼い見た目ながら妖しい色気を感じる。

ふと見ると姿が消えた勧誘員を不思議に思いながら
たぬきに摘まれたかのような思いであたりを見回していた


『己の能力と志に見切りをつけなければならない時』

彼女の言った言葉が思い浮かぶ

まるで見ていたかのようなことを言う

しかし、それは本当にツライのであろうか？

無理だと分かっていて思い求めているのだ
それに届かないと知っていて走っていたのだ
諦めることは救いではないのか？
歩みを止めることは赦しではないだろうか？


ふと振り返ると遠くに王城前が見える

止めていた歩みはいつの間にか動き出していた
別の道なのだろうか、同じ道なのだろうか

ヘートヴィッヒと名乗る少女、それはなんだったんだろうか
とりあえず次からはセールスお断りの札をかばんに貼ろうと彼女は思った

彼女は重々しい聖書を構えた。