磨き上げられ、補強された鎧は、ランプの赤い光を照り返し、その存在感を主張していました。
形としては、それは確かに人の着用する通常の鎧でありながら、特別に分厚く作られ、
恐らく普通の人間の兵士には、着用し得ない頑強さを持っていました。

普段使っている斧は部屋の隅に立てかけられ、それもまた、取り付けられた鉄塊は、
鎧ごと断ち切るために重りに重りを重ねて、これもまた、人ならざるもののための特別な設えとなっています。

過去の戦いにおいて――つまりメルンテーゼに来る前に経験してきた戦いにおいて、
装備というものは特別に強力なものでした。
何しろ、『兵士』達はみな一様にねじ曲がった化物の姿をとって、殺し合っています。
硬い肌や、鋭い爪、牙といった、自前の鎧と武器を血に染める戦いにおいて、
装備を装備できるものは、とても少なかったのです。
本来なら、人間の姿形は、戦いにおいて不利なものです。
爪も肌も弱く、傷つけることも傷つかないようにすることも、難しい。
しかし、人間の姿形は、そのために量産された鎧を、身に着けることが出来るのでした。
鉄で作られた武器は、鎧は、産まれ持つ装備より、ずっと強力だったのです。