[？？？]


私はハイダル＝セリン、万象を生み出す為にその生を費やす。

無から有を作ることは不可能だ。
何かを作るためには対価となる材料が必要だからだ。

一方で、有から他の有を作ることは可能だ。
もちろん作ることのできるモノには限りがある。
故に万象を生み出すことは叶わない夢物語といえるはずだ。



ある日出会い、そして師となった人は言った。


――我々は石を金にする術を探る。

その後は金から別の何かにする術を探る。

それを繰り返し、とある有から他の様々な有を生み出す術を探る。

その果てに万物の根源に達し、万象を生み出す者となる。

我々は錬金術師。

根源を目指し、宛のない道を歩む存在――



私は師に従事し、いつしか私も錬金術師として歩み始めた。

長き道であった。

宛てのない道であった。

しかし、ついに私はその道の果てに辿り着く事ができた。

今、私の手の中には錬金術師が目指す究極たる根源――賢者の石と呼ばれる物があった。

私はついに成し遂げたのだ。



そう、成し遂げたのだ。

……だが私はこれをどうすればいい？
万物の根源を手に入れる事は出来たが私は何を生み出せばいい？


富か？


材か？


今の私にそれらは何の価値もない。
私は価値の無い物を生み出すためにここまで歩んできたのだろうか？



――違う。私が歩んできた道は根源に至るためのものだったのだ。

つまり今私の手の中にいるこれこそが私の終着点だったのだ。

ならば後は託そう。

次代の者達が何かを生み出す根源を必要とした時の為に。



私は錬金術師ハイダル＝セリン。

次代の者達よ。もし貴方達が私を見つけ、その使い方を私に示すならば力になろう。

それが私の――『根源』となった私の役割だ。




[No.15:Hydal=Cerin]





・〜・〜・〜・〜




[No.?:Lela=Loreley]
[No.10:Eyes=Marchen]


私達の中の15人目。ハイダルさんが残した『根源』――つまり賢者の石を私は見つけてしまったの。
たぶんそれは偶然、なんだと思う。



……いや、お前さんが見つけるだけの才覚があったという事だ。結果が偶然だとしてもな。



ふふ、ありがとう。
……で、私が発見した時、賢者の石は3つあった。

ひとつは私が。もうひとつは57人目の子がそれぞれ使い――結果は見ての通り。
根源を使う事はできたけど、そうやって生み出したモノを制御するには身体が耐えられなかった。

そうして私の時は『システム』の先にある何かがそれを察知してここに隔離した。
あの子の時もきっと似たような感じだったんだと思う。



……残りは一つか。



ええ、だから私達はそれを使うに足りる者を見極め、そして私達と同じ失敗に終わらない様に助けなければ。



そうだな、俺達も準備を進めておいた方がいいか。



ええ。




・〜・〜・〜・〜




僕は再び最前線――この大きな礼拝堂に戻ってきた。


この先に待つ王とはどのような人なんだろうか。

ギルさん達はどうなっているのだろうか。

強制型、とは一体どういう存在なんだろうか。


謎というものは人を引き付ける。
それは僕にとっても同じだ。

逸る気持ちを抑えながら、少しずつ、そして着実に歩みを進める。