漂う血臭。転がる肉塊。僅かな硝煙と、無造作に転がった薬莢。
始まりも終わりも…実に呆気なかった。
そこに立っているのは俺を除けばたった一人だけ。

……シオンの奴が、人を躊躇いなく撃ちやがった。
以前のあいつは…銃口を向けることすら拒絶したもんだが。
流石にこうまで動きが変わると、なかなか興味深いものがある。

パンパンと軽く拍手しながら、シオンへと近付く。
…球体達の反応は敏感だ。色取り取りの光を激しく明滅させてやがる。
近付く奴は全て敵、みたいな扱いにでもしてんのか？

苛烈な命令口調でもなく、かつこうもハッキリ言われると…不思議と、嫌悪感は沸いてこない。
ただ…なんだ？
雰囲気だけじゃなく、態度もだいぶ普段とは違う感じだな。

シオンは目を閉じ、動かない。

暫くすると、淡々とそう言い放った。
…なんかこの態度、シオンというよりもハルに近いんだが。
口調や球体の様子はあくまでシオンそのものなんだよな。わけ分かんねぇ。
とはいえ特に反論する理由もねぇし、黙って従っておくとするか。

シオンの足取りに迷いはない。
これまで頼りなさげに誰かに付いて回ってたのが嘘みてぇだ。
やることを明確に決めて吹っ切れたのか、それとも誰かの影響でも強く受けたのか…。
……正直なところ、こいつのことはまだ分からねぇことが多い。
昔から気弱な性格だった、とは聞いたがな。

様々な飾り物が置いてあるが、荒れ果てた雰囲気の拭えない城内をただひたすら歩く。
所々で死臭が漂ってるのもその原因だろう。もうこの城はまともに使えるとは到底思えねぇ。
……そんな判断もできちまうほどには、この世界を随分と歩き回ったもんだ。

最初はハルとの飯事の延長でしかなかった。
俺は更なる力さえ手に入れば、後はどーでもよかった。
ただ幸い…今は、あの時よりはこの世界にいることを楽しめてる。
それはシオンの足掻きを最後まで見てやろうと思えたのもそうだが…それ以上に、人生の伴侶と言える相手と出会えたのが大きい。
ハッ、なかなかの笑い話だぜ。まさかこの俺がそんな立場になるとはな…誰も想像できなかったろうよ。
……ていうか、一番驚いてるのは俺自身だ。
共にいると心が躍ったり、安らいだりする。
あらゆる感情を共有し、その上でもっと喜ばせたい、楽しませたいと心底思える相手。
そんな奴がこの世に存在するとはな…人生分かんねぇもんだ。

まーそれはそれとして。
…暫く歩き続けたが、やっぱ今のシオンにはどことなく違和感がある。
いつもみたいに息を上がらせたり弱音を吐いたりしねぇし、とにかく何も喋らねぇ。
…泣き付かれんのはゴメンだが、これはこれで退屈だな。

つまんねぇ。
あの馬鹿女に絡もうと思っても、そもそもここにいねぇんじゃどうしようもない。
つーかあいつ、ここ最近姿を見ねぇんだが…どこ行きやがった？

……そこらの風景を眺めながら延々と歩くと、やっとこさ目的地に着く。
…ていうか、何しにこんなとこに来たんだ？
見渡す限り一面の砂で、建物なんざ一つもない。どう考えてもシオンの目的と関係ねぇ場所なんだが。

唐突に、俺の考えを見透かしたかのようにそう言ってみせた。
つーか実験って…なんのことだ？
それを問う前にシオンは戦闘態勢を取っちまう。ったく、めんどくせぇ奴だ。
…よく見りゃ、相手は以前ボコボコにした死霊使いか。
その姿を捉えるや否や、シオンは球体達を激しく動かし始める。バチバチと火花を放つそれらは見るからに殺傷力が高い。
…少なくとも、攻撃を加減する実験じゃねーみたいだな。じゃあ何が目的なんだ？

一瞬、シオンが微笑んだように見えた。
…こいつ、まるで異変が起きたレベルで様子がおかしい……って。

なに、が、おきた…？

花の栞を見つめている相手に問うた。

ハロウィンが当たると嬉しそうに笑みを返した。

やっぱそうだよねーとつぶやきながら、ふつふつと考えている

シオンが球体に目をやると、アリエスも同じように目の前の球体に注目する。
指先でつんっ、と触れるとぶよんっ、という感触が返る。
おもしろーいと、数回つんつんしている。

-------------------別サイド-----------

トガノよりベルンハルデへ急所へ対して投げられたナイフ。

迫り来るナイフ達に対して、ベルンハルデはスナップを聴かせるかのごとく右腕を振るう。

右手から複数の血液の刃が鞭のように飛び、ナイフを払い落とす。

そのままナイフをどうにかした後、軽いステップを踏みトガノへ距離を一気に縮めフライングハイキックを繰り出すだろう。

ハイキックの後にそのまま空中で勢いを残し1回転な遠心力を付けて踵落としに連携する流れだが、避けれないわけではないだろうと思われる。

楽しい事も大切よ？と笑いながら、
発する声が弱弱しくなる様子をみてじっと目を見つめ――

----------------------------------------------

それだけの惨事をさもなんでもないことのようにシオンがハキハキと語る様子を不思議な思いで見つめながら、しどろもどろに問い。

感心したようにふわあと溜息を漏らし。

注目されてるのを見て触ってみる？といいながら尻尾をシオンの方へと上げて。

また何か料理しようかしら、と呟いた。

シオンの話を聞き、感心したように、

話しかけても反応しないシオンに対し、