『小生はやっぱりはんたいなのです！』


セバスチャンからつげられたことにたいして、猫はイヤイヤとくびをよこにふります。


「何故ですか？これならばより力の抑制が可能になるやもしれませんが？」


セバスチャンはスッとめをほそめ、猫をみすえます。


「――やはり、セレナ様との事が原因ですか。」


ビクリ、と猫はぜんしんをふるわせます。
そんな猫をみて、やはり、とつぶやくセバスチャン。


「坊ちゃんのお気持ちを考えますと、拒むのも仕方ありません。
ですが――力の制御が成功すればこそ、また元の様に笑いあえるのでは？――勿論、セレナ様ともです。」



そうやさしくさとすセバスチャンでしたが、猫はまだまよっています。
もし、またこばまれたら――そうかんがえるとどうしてもふみだせないのです。


『あのセリィおねえさんでも小生のことをおそれていたのです。ぜったい、だいじょうぶ、なんて――』


「絶対大丈夫、などと根拠のない事は申しません。しかし、私が思うに『あの方』は別格なのでは？
何せ、『あの方』自身が強大な力を秘めていらっしゃるようですから。」


そういわれてみると、たしかになんにもきにしないでうけとめてくれるきがしそうだからふしぎです。
ほんわかにっこりと――あるいはすずしいかおで。


なにせ、かれらはひとではなくりゅうなのですから。








じっとかんがえこんだ猫はやがてなにかをけっしんしたようにかおをあげました。


『……セバスチャンのいうとおりにしてみるのです。』


ほんとうのところは、まだふあんだけれど。


「ありがとうございます。力の制御の際に白き龍――彼らの強大な力を借りることができればより確実性が増すでしょう。」


猫はこくりとうなずきました。


『小生からおねがいしてみるのです。』


しろきりゅう――キーさんとキーエさんのちからをかりられるのでしょうか？
もしかりられたとしても、セリィおねえさんのように、おそれられたりはしないでしょうか？
そして――ほんとうにちからをうまくおさえこめるのでしょうか？


ふあんはつきないけれど。
いっぽずつ、猫はすすみだしました。

――勢いよく投げたそれは目標に命中し。

命中したものが『魔法だけ』だったのか、『投げたもの』を確認しているようだ。

目の前のケットシー――に、なりきっているロク＝リクくんがボードを持ちだしたあたりで、
ブルーノおにいさんは心の中で頭をかかえます。
書きかけのボードをあわてて後ろに隠したところもばっちり見てしまいました。
それでも目の前の黒猫くんはまだケットシーでいるつもりのようなので、
ここはこちらも合わせることにしました。

ロク＝リクくんがにゃーと鳴く声に、ついつい顔がほころびます。
しかし、ロク＝リクくんがネクターを見せると、お兄さんは「あれ」、と声を上げました。

お兄さんは、首をかしげて見せます。

おにいさんは、鋭く光る頑丈そうな爪をわきわきと動かしながらロク＝リクくんの方へにじり寄ってきました！

ダーッと走って行ってクルッと帰ってきたり、ジグザグジグザグ歩いたり、
ロクの周りをクルクル回ったり、地面に穴を掘ったり、花の匂いを嗅いだり
アグレッシブに散歩を楽しんでいるシロちゃん。

ますますホラー度を上げつつロクに迫る！
トラウマになりそうな勢いだ！
しかも燃えてるクセに本人はちょっと楽しそうだぞ！！

▼ブリギットの行動！
　カンジール！
　ラピスに10243のダメージ！
　　　　　ラピスに凍結を1追加！
（ラピスの炎上が解消！）
ブリギットは去っていった。

自分（達）を見つめるその視線にまったく気づかず、ししょーの背をバシバシぽにょぽにょ叩きながら慰めてるんだか褒めてるんだか分からないセリフを吐いた。

うなだれるロクに、親指立てて励ました。
おそらく自分でもよく分からなくなったのを誤魔化すためである……。

ししょーの心配も露知らず、自分の体を変形させて様々な届出書類を作ることに余念が無いラピスであった。
……自分の体から離れた書類は時間経過と共に溶けてなくなっていくようだが、気づいていないっぽい。