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エリュテイアが自身の世界、エルフィリエへの帰還を決意してから早数週。
素材を一から作らなければいけなかったり、それに付随した金銭問題などの
数多くの問題に直面しながらも、ようやく完成…の目処が立ったのだが。

ここ数日…エルは最後の最後の調整がうまく行かず、未だ試運転のプロセスを
行えずにいた。試運転…─といっても、どこかに行ったりすることは出来ないし
市販品・高級品であっても起動、通電直後に基板がショートして再起不能、
といった話もよく聞くため、慎重にならざるをえないのだが…

リ＆ア｢「うーん…」｣


エル曰く、「もう普通に帰還することは出来ると思う」と言っていたのは
悩む前のことだ。つまるところ、今の悩みはそれとは別の所(もしくは失敗していたか)
にあり、俺(リバラ)は雑務、アスタルテは一揆進行と連絡の取次、アイグレーは…
一応あいさつ回りというか、おみやげ係というか…まあどうでもいいこと。
着々と帰還への準備が済み、正直なところ「今から帰る！」と言われても
対応できてしまうレベルだ。…とはいえ、それは勘弁して欲しいところだが。



そして、そのまま夜になった。未だにうんうん唸るエルはご飯もひとまず工房に
こもっている。…あまり目の前で唸られてもうざいだけだし、ご飯に集中しない
状態でなにやってもうまくいくはずがないので退避させたのだが。

さも当然、私ならそうするね！と無駄に熱い同僚の言葉は、勿論自分自身考えた
ことだった。俺だって、気になれば聞く。というよりもいつもなら

いつもおちゃらけた、それでいて飄々としているアイグレーだが一層ウザくなる
ことがある。まさにこの時のことなのだが、妙に鋭かったり、お節介だったり。
考えていたこと(正に帰還の中に自分が入っているかだったのだが)を当てられた
俺は不機嫌に舌打ちをする。

ただ、言われないということが今までなかったせいで、不安になってしまう。
口には出さないが、そんな不安は抱いていないなんていう嘘をつく気にもなれなかった。
はぁ…と無意識に溜息をついたところで、結局聞かないとモヤモヤしっぱなしだよ？と
アイグレーに突っ込まれる。全くそのとおりなのだが…

そんな疑問を投げかけた俺を不思議そうに見るアイグレー。元々そんな不安とは無縁だった
のか、それとも強がりかは判断がつかなかったが、次には表情を崩し、ないないと否定した。

まったく…クスクスと笑う同僚を見ながら、今度は自然と怒りを覚えることはなかった。
普段も、そして今だって決して口にだすことはない「ありがとう」を心の中で想いながら
彼女…アイグレーに背を向けて歩き始めた。

ひどい裏切りだ！という同僚の叫びを聞き流しながら、まだウンウン唸っているだろう主人の元へ歩く。
その足取りにもう迷いなどなく、今回のMVPに今度メシでもおごってやろうと考えるのだった。