××××年×の月××の日。

新王派閥の貴族■■■■・■■■■■■の家で火災が発生。

事故後の検分によれば原因は不明だが、何らかの爆発物が使われた可能性が高いと考えられている――

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舞い上がる炎。
漂う煙。
逃げ惑う使用人達。

その中を悠然と、まるで自分が本来の主であるかのように通っていくレーネフィアの姿があった。

今回張られていた結界は――その異常性を誰にも悟らせぬ為か、物理的な抑止効果を何も持っていなかった。
更にその繊細な術式は、些細な破壊によって効力を失う。

であるならば、結界を突破する最も手っ取り早い手段として『結界付近の構造物の無差別な爆破』が選ばれることは、それ自体は大して突飛な行動でもなかった。

問題は、それをしたのがレーネフィア・ディ・ステラということである。

実のところ、この館の主である貴族とて、結界を強行的な手段によって破壊される可能性を予期していなかったわけではない。

ソレに対してなんの対策も建てられていなかったのは、ひとえに相手がレーネフィアだったからである。
彼女のパーソナリティから考えて、そのような、使用人にも被害が及びかねない上に酷く屋敷を破壊する強行手段を取ることは考えづらい、という予想から、特別な警戒をせず気取られることを避ける方向への守りを固めていた。
――結果から言えば、それはまったくの勘違いで、読み違いで、不理解であった。