[？？？]


――私は強くならねばならない。

それは私が物心ついた頃からずっと意識していた事だ。

私はその意識に従い、身体を鍛え、武器を持ち、技を得てそれを鍛えてきた。

そのおかげで私はこの厳しい世界において一定の生活を送る事ができている。



……では、私は何故強くならねばならなかったのだろう。

確かに強くなければ奪われる事もままある世界だ。強くなるに越した事は無い。

だがそれは必要に際した者であり、使命ではない。



私は何時からこれを意識するようになったのだろうか。

物心ついたころから……それさえも何時の頃か思い出せない。



私の存在は全て、強くなるために――



[No.5:Kairos=Vuche]




・〜・〜・〜・〜




カイロス＝ヴーチェ。
彼は『強者』と言われた5人目だ。


彼は身体を鍛え、武器を取り、技を鍛え自らを強くしていった。
そしてそれまで世界の厳しさに負け続けていた先代達の無念を晴らし、生涯を生き切った。
その偉業と強さに対してその後の代からは『強者』と称されるようになった。


……と、少なくとも僕の知識ではこうだった。
しかし昨晩の夢を振り返ると、それはもしかすると間違いだったのではないかと考える。
もちろんこれがただの夢ではなく先代達の記憶であったならば、という事だけど……。

それを知るには調査の必要がある。
僕は起きて着替えた所で、部屋を出る前に『システム』を呼び出した。




・〜・〜・〜・〜

システムからの疑問に僕は最近見始めた夢のことを話す。
今こうしてシステムに話を持ちかけているのは情報共有と調査依頼のためだ。
これは僕一人で調べるには骨が折れるし、ふわもこ達や一揆の事もあるので専念するわけにもいかない。

調査の依頼をし、僕は部屋を出る。




・〜・〜・〜・〜




僕達は今日も三階廊下を進む。

風の噂では賞金首達が手を組み、この最前線の攻勢を突破しようとしているらしい。

巻き込まれないように気をつけないと…

そう言うフェリオからは新しい力が充実しているのが分かる。
元々見た目が兎っぽかっただけに何かしら合う部分があったのかもしれない。

新しい力にフェリオもやる気十分だ。

そう思いながら先へ進む――

身体を抱き寄せ、耳元で囁く。

目の前の相手を殺意の滲む視線で睨みつける。