魔王はまだいるの

ただ、動きを止めているだけ

しかもね

ただ1体のエンブリオの力だけで


もし、そのエンブリオが力尽きてしまったら

もし、そのエンブリオの契約者が息絶えてしまったら

もし、その契約が打ち切られてしまったら


西方領は、世界は　黒い魔王に飲み干されていってしまう


そう、勇者ノエルは失敗したの

勇者ノエルはやり遂げられなかったの

だから、彼は英雄になれずに詩が無いの

だから、トム君



君がやり遂げてくれないかな？



今すぐにって訳じゃないんだけど

今はまだ何もできないんだけど

その時が来たら聞きに来るから

その時が来るまでに決めておいて


何をすればいいのか

何をしなくてはいけないのか

それは私たちが考えてあげる

だから

その時が来るまでに

恐れを　痛みを　別れを

覚悟しておいて



そんな話をひとしきり語って、僧服の彼女は去って行った

正直、突然すぎて訳が分からない

自分の事を司書だと名乗って、教会の使者は去って行った

正直、何しに来たのか訳が分からない


そもそも

西方領の人間が一揆の、それもこんな奥の方まで来るわけない

司書と言えば教会の上の方の役職で、一人で出歩いているはずない

あんな若い女性が使者で、ボクやノエルを捕まえる役なわけない

だいいち、司書が使者っていう時点でそんな訳ない



ボクが、勇者である　はず　ない




でも、どうなんだろう

あの人の僧服は本物で

あの人の本は本物で

本を個人で持ち出せるのは教会の偉い人だけで

ボクの村の神父さんはできなくて


だから、もしかしたら・・・　なんて



そういえば、ノエルは本を持ってるんだよな

あの噂はホントだった

男爵領の奴らは一人一つ、本を持ってるって


ノエルの本を最初見たときは驚いたな

ボクも本が欲しかったから

でも悔しいから普通のそぶりで触ってやった



そうだ

今度、司書の彼女がやってきたら

本をよこせと言ってみよう

ホントに彼女が司書なら出来るかもしれない

ホントにボクが勇者ならくれるかもしれない

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今回の日記には前回の日記と重複する内容が含まれています
前回のは、チキレ敗北だったので・・・

トム少年の言葉は彼の魔法が届くより速く俺の耳に届いた。

これで150km/hだって？

馬鹿な。

この俺の真の速度を見破ったのはこのトム少年が始めてだ。
さてはこいつ優秀なタックル戦士だな？




確かに俺のタックルは実は150km/hは出てない。
しかし心意気はいつでも150km/hだ。




そんなことを考えてる間にも魔法は迫ってきている。
このまま、魔法に直撃すればトム少年の言うとおり150km/hを越えるかもしれない。


しかしちょっと待て。
そんなことをしたらタイガーはどうなる。
速度と引き換えに相棒を見捨てるなんてそんなことはできない。






ならば俺が取る手段はひとつ。



俺は車のドアを開けると、それを足場に素早く荷台に乗り移った！

俺はマントを翻し防御体制を取る。





トム少年の魔法が俺を直撃する。














説明しよう！

俺がこの身に纏っている緑のマント。
この色彩豊かな緑色は見ている人の目を癒し、穏やかな心にさせる。


また、森の中で魔物に襲われたとき身を隠すのにも便利な優れものである。









だが防御効果は特に無かった。

俺は当然吹っ飛ぶ。

タイガーも一緒に吹っ飛ぶ。





それはもうすごいスピードで。
この速度。
そう、この速度こそまさしく。

150km/h越えだ。





俺は初めて150km/hの世界を体感し。
空中で四回転トリプルアクセルを決め。
壁に激突した。