ーただの日記ー

ー○月×日ー

ずいぶん間が空いた気がするが、別段変わったことはない。
ずっと塔を登っている。


やたらとゾンビばかりいるんだが大丈夫なのかこの塔？
先見の塔なのに、先見ない奴ばかりなんだが。




あと、タイガーがずっと一緒に登ってきているんだが階段とかずっと登ってパンクとかしないんだろうか。












ー同日ー


だんだんと塔も終わりが近づいている。
この塔の頂上についたら、そこからスカイハイを決めて世界最速を目指そう。


そんなことをベルに言ったら。


「その前に私がトートを蹴り落とします」


と真顔で言っていた。
怖い。



いずれはタックルで空を飛ぶのが夢だということは伏せておいたほうが良さそうだ。






ーさらに同日ー

そろそろ新しいタックル技を編み出す必要がある。

ボケなんてできないしな、と、
大真面目な顔で言ってのけるトートを暫しまじまじと眺めてから、
ベルに視線を移して。

多分っていうか、間違いなくそうだとは思うんだけど。
流石にちょっと自信が持てず尋ねてみる。わりと失礼。



知り合いというわけではないのだろう、と尋ねられた内容に、
いや、と首を振る。

ずっと煮え切らない応答を繰り返していることに飽いたのか、
暫し黙り込み、考え込んでみせてから。

だが、とひとつ息を吐く。

それで。
言葉を詰まらせる。
言い倦ねるように、また、考えこむ。

狂ってしまった。
自分の手を見下ろす。

狂気を抱えながら生きていくというのは、
存外、堪えるところがあるな。
溜め息のように零したのは、弱音、だったろうか。

ものすごい勢いで上昇するロケット。

でもちょっと照れるな、と苦笑しつつも握られた手に微笑ましげな眼差しを。
こういう形で感謝されるのはなかなかにレアでもある。
大人びた言動が見受けられたが、こういう可愛らしい所もあるのだな……などと思いつつ。

ふぅ、と息をつく。
トートの言葉に耳がピクリピクリと。

肩を竦めつつ、そんなぼやきを一つ。

メルンテーゼの風物詩。タックルの音が今日も爽快に鳴り響く。

　大切な人。家族。
　労わるような表情になって、それから暫し考え込む。

　彼女はこのことを彼には聞かれたくないのだろうか。同行する上では、とても大事なことに思えるけれど。
　不思議に思いながらも、声を潜めて訊き返す。

　料理に関しては、ばつが悪そうに。

　いつもよりしおらしく訊き返す辺り、どうにも知られたくないらしい。

　

　さらりと地味と言われた。認めて良いんだろうか、と内心。

　そう言って、さて野菜に向かう。
　手には包丁。
　持ち方自体には特にツッコミどころは無いが、なんか既に手がぷるぷるしている。妙に力が入ってるのが明白である。

　とんっ（慎重に野菜を切る音）

　とんっ（野菜を切る音）

　どんっ（力加減を誤り勢い余って野菜が転がる）

　今話しかけるのは危険に思えるかもしれない。

そう、足元に声をかける。

ナニカが駆け抜ける。
それはリアンの傍にいたユニコーンの足元へ向かう。