大きな音や大勢の気配もしなくなり、扉が開けられた。
父親はいつものような笑顔でエメリーのことを迎え、
新しめのタオルと服を用意してくれた。
ただその顔は何回も殴られたために、別人のように腫れ上がっていた。
母親の姿はないが、寝室は閉まっていた。
家の中は荒らされた跡があり、少し掃除されていた。
エメリーは黙って片づけを手伝っていた。
昨日、何があったのかは恐ろしくて聞けなかった。
しばらくすると、友達の一人がエメリーの家を訪ねてきた。
ちょうど、父親が薬箱を広げていた頃だった。
母親は閉じこもっていたままだった。
エメリーは言われるがまま、広場までついて行った。
そこには、いつも遊んでいる面々がいた。

彼らは皆、今まで見せたことのないような厳しい顔をしていた。
そして、エメリーや家族のことを口々に罵り、石を投げ、棒などで殴りつけた。
行方不明だと思われていた兄は、狼たちとの作戦を放り出して逃げた。
狼を追い出したのは良いが、作戦は失敗し、多くの犠牲が払われた。
気を取り戻した領主の息子は怒り、羊の村全部には重い罰が下された。
兄のエリックには、懸賞金がかけられた。

エメリーは倒れるまで痛めつけられ、最後は一人で虚しく歩いた。
その途中、黒くて大きな影が見えた。
兄のような姿だった。
エメリーは痛む足で、それをふらふらと追いかけた。