白と黒と。

女神の泉で出会ったふたりを前にして僕達は戦闘態勢を取る。

ふわもこ達の気合は十分だ。水場だからなのかシフォンとシェリーのふたりに力がみなぎっているように感じる。

僕は相手の様子を伺う。
男性と女性、ふたりはそれぞれ肩を並べて立つ。
男性は大きくゆったりとした構え、左手に炎の魔力を滾らせる。
女性は凛として小さく絞った構え、手に持つレイピアの刀身に氷の魔力が奔る。
ふたりとも前衛、主従にも見えていた事から女性がややサポート寄りの動きを担うのだろうか？

サポート役と見受けた女性を早々に狙い、戦線を離れてもらった方がいいだろうか？
いや、見る限り彼女は水属性の熟練者。こちらの攻撃を止められるかもしれない。
それならば男性の方を先に狙った方がいいだろう。
明らかに戦う事になれており、連携を取らせてはこちらが不利となる。
僕はふわもこ達に指示を送る。


狙うは炎の力を持つ男性、彼を速攻っからの一斉攻撃によって行動不能にさせる！


僕達は合図の下、呼吸を合わせて相手との間合いを一気に詰める――！




・〜・〜・〜・〜




――それから十数分後。

僕達は去っていくふたりを見届ける。


結論から言うと僕達は戦いを制する事ができた。
戦いそのものは終始僕達が圧倒する形となったが、昨日とは状況が異なっている。
ふたりは傍目からは圧倒されながらも有効な打撃を受けることなく受け流していた。
そしてそれを全力からは程遠い手抜きの状態で成していたのだ。
それに対して僕達は全力だ。
僕達は成長している、それは間違いないけどまだまだ上には上がいるという事を今回の戦いで痛感した。



しかし彼らは何者だろう？
少なくとも一揆参加者ではなく、また王城の人でもなさそうだった。
そういえばこれまでにも一揆参加者でも王城の人でもなさそうな人に何度か出会っていた。

僕が倒れている間に出会ったというサバスさん。いまいち掴み所のない人だったらしい。
病み上がりで出会ったアヴィドさんはドロワという人とリーゼロッテという人を探していて……ってさっきのふたりじゃないか。
それなら一言伝えておいてもよかったかもしれない。
サバスさんは分からないけどアヴィドさん、ドロワさん、リーゼロッテさんは同じグループのようだ。

あとは先日のダイゴと呼ばれた石像とフロラと呼ばれた少女。こちらは王城に協力している様子。

そうそう、巨大なイカと戦った時に急に空から降ってきたベルフィさん。
確か魔神って言ってたけど……とりあえず王城の人ではなかったかな？


他にも色んな人が一揆に紛れて暗躍しているのかもしれない。
思いの外、この一揆は単純なものではなさそうに思えた。
それでも少なくとも当面は一揆の流れに乗っていて問題ないと思っている。
それはふわもこ達エンブリオの為でもあるし、自分の興味の為でもある。それを曲げるのにはまだまだ早い。


そんな事を考えながら僕はふわもこ達と休暇の続きを満喫した。




・〜・〜・〜・〜




次の日。

数日の回り道を経て、今日僕達はようやく最前線に足を運んだ。高さ的には三階くらいだろう。
外観は先日の大廊下と似ているものの、その空気は大きく違う。

僕達は張りつめた空気の中、廊下を進む――

ぺこん、と頭を下げて、椅子に座りました。

ごそごそと籠を探ると、中からクッキーを取り出しました。
ひまわりの種の入ったオートミールクッキーで、苦味と甘みの混じった独特の味です。

自分の出した皿にクッキーを盛って皆さんに差し出しながら、自分はジュースを飲ませてもらいます。
くつろぎつつ、ふわもこ族さんたちを見てなごんだり。