ちょっと今回はもろもろおやすみで

真面目な顔の相手とは対極的に、「鬼同士で暴れだしたら、たしかに周りに迷惑ですねえ」と笑い飛ばす。

故郷話が一番、という相手の言葉には、ええ、ええとこちらも相槌を返し。風景の話には、「大して変わりませんねえ」とこれも返し。

鬼仲間だし、待遇良くしますよー　などと冗談めかして笑う。

じろり、と。
臥した男の、紅い瞳が龍を見上げた。
嗤っている。

奥底でなにか、わらっている。

「――った、か」

ずるりと刃を引き抜いて、空洞の出来た喉笛を鳴らして、
それでも淀まず、唇を動かす。
笑みの形を保ったままに、かの化生へと語りかける。

ひとでない。
ひとなどではけっしてない。
それは。

「死なんのだよ」

ことばは喘鳴に途切れ途切れ、聞き取ることなどひどく難しい筈なのに、
いやに鮮明に、意味を伝える。

ごろりと仰向いた喉は赤に濡れて、嘲笑の形に開いた傷跡が、引っ込められたように閉じられた。

ずず・・・

龍は両腕を脱力させ、下ろした状態で低く構えた。



彼の右頬がわずかに釣りあがる。

ふいに殺気をまとっていく――

彼の両腕がまるで別の生き物のようにうねりを上げた。

そのさまはまるで四肢の無い爬虫類のようだった。