星が煌く晴れた夜空に2つの人影が光の尾を残しつつ浮遊する

　海帝蛇は別所に安全に保管しておいた青のメリア鉱石を見せ、腕部に装着してみせた。……急いで脱出したのもあるが、メリア鉱石を直接持ち歩く際の危険も考えて放置していたのは迂闊だった。

牽制も兼ねて一つ爪から雷球を海帝蛇に向け射出した、左腕のシールドで雷を受け止めて余裕そうに周囲に散った雷の魔素を回収された。海帝蛇は"Meria"の使い方もわかっている、手を抜く必要はなさそうだ。それにしても……余裕そうな表情も万已楽にそっくり。本当に万已楽の一部だったんだなという考えが過ぎる。

　自分の右腕の爪を剣へと変化させ、炎を纏わせて斬りかかる。尻尾で受け止め、払われた。左腕の爪で追撃を繰りだそうとするが、海帝蛇の腕に何故か体が引き寄せられる……。
これは……磁力か？メリアフラマ石を使い周囲の温度を無理矢理引き上げ、磁力から逃れる。
その隙に海帝蛇は少し後ろに下がり、天に向かって手を上げ、青と緑のメリア鉱石を輝かせると……周囲に雨が降りだす。雲は特に出ていない、海帝蛇の仕業だ。

　言葉は返さない

　海帝蛇は両手にバチバチと雷を貯めこみ、何かをしようと……雨に雷？万已楽のボディは雷に若干耐性がある……無差別雷撃か！狙いを察し、雨から氷の盾を生み出し攻撃に備える。
　直後に雷が轟き氷にぶつかり弾ける音と共に、氷の向こうで何かが振りぬかれる気配を感じ、左腕の爪で防御を図る。
　氷の盾が砕かれ、海帝蛇の尾が爪に、左腕に、ガリガリと音をたて、強烈な衝撃として襲いかかる。爪に大きな傷が付き、こちら側の武装はもう変形をさせれないであろう。反撃をしようと右腕の剣を構えたが海帝蛇は何かに気付き急降下しだした。なんだ……？

　海帝蛇の向かっている先を見ると、緑色の宝石が落下して……あれは、万已楽のコアか！さっきの衝撃で落としたのか？……いつ落としたかは今はどうでもいい、海帝蛇を追いかけつつ右腕のメリアのエネルギーを収束させ後ろから射撃を放つ。
　こちらを振り向かずに尾で弾かれた、か……。射撃に回していたエネルギーを推進器へ集中させ、加速する。

　こちらに振り向き意気揚々にそう言い、後退しつつ胸部装甲を開き、"マイラ"を"万已楽"に差し込んだ。エネルギーが供給され次第"マイラ"に戻るだろう……。だがこちらはあと少しの距離まで接近している！

　見せた隙に接近し、海帝蛇の胴を左腕の大きな爪でがしりと掴み、動きを封じる。

　海帝蛇は捕まりながらも巨大な尾を振り抵抗を続けようとする。

　右腕の武装も巨大な爪へともどし、振られた尾を掴む

　そのまま万已楽の尻尾を無理矢理引き抜き、万已楽から"海帝蛇"を排除した


　バチバチィと接続部から雷が弾け、万已楽は苦悶の表情を浮かべたあと、少しぐったりとした。
　まだびたんびたんと動き抵抗をしている万已楽の尻尾を地面に向かって投げ捨てた……推進器が無ければさすがの尻尾も落ちるしか無いであろう。

　落ちている様子を軽く一瞥し、万已楽のコアを再び取り外そうと胸元に手を伸ばす。

　万已楽が爪から脱出しようともがいている。尻尾すらない状態で、腕にもこちらに向けれない状況では流石に無理だろうに……。あしをばたばたさせ、こんな時に目からビームでも出れば……とか言っている。

　万已楽が暴れるのをやめておとなしくなったかと思ったが、手首を少ない可動域で動かし、腕を自分に向けて放電を開始した。万已楽の体を伝わり掴んでいる爪を伝ってこちらがわにも電撃が流れてくる…！

　自分の電撃で上手く喋れていないようだが、確かに雷に対してはEve.Lineより万已楽のほうが耐久度は高い……。

　幸い地上までの距離はそう遠くない。放電を続ける万已楽を掴んだまま、地上へ向かって高速で下降し、万已楽を仰向けで地面に押さえつけた……これで放電の被害は減る。万已楽を掴んでいた左腕の爪を地面に差し、自分の腕から外して万已楽を地面に固定する。万已楽に馬乗りになり、足での抵抗も封じる。

　あの万已楽が泣き落とし……？続きの言葉を待つ。

　確かにあの記憶消去の後はオコジョ以外のエンブリオは私から距離を置いていた気がする。

　私は万已楽に好かれるいい存在になろうとしていた。他のメリアルール型の調整に疲れ果てて居たところを上に見つかり、万已楽の教育役に回された。そこでの心境はそれまでよりずっと落ち着いたもので、万已楽は私にとってのオアシスのような存在だった。万已楽に会ってから、ほかのメリアルール型の調整にそこまで気を病まずに済んだし、人格の調整の訓練のために万已楽と戯れることもできた。

メルンテーゼに来てからも、万已楽がメリア鉱石の人格について知ると、私のような役目にされるからと記憶を消去し、隠蔽した。オコジョについては何か不思議な感じがしたというだけだったが……。万已楽の願いについても、最終的に自分で死ななければならないメリアルール型には願いがあっても辛いだけだと……思っていた。

私は…………万已楽に好かれられてなど居なかった

わがままを押し通していただけなのだろう……。


しかし、これで今まで回してきた。万已楽もいつもと同じメリアルール型だったのだ……。万已楽の
記憶を巻き戻せば、万已楽と出会う前の日常が戻ってくるだけだ。そう自分に言い聞かせ、万已楽のコアを取り出そうと手をのばそうとする。


手が、止まる

頭でそれが正しいとわかっていても体が動いてくれない……。
万已楽の仕業ではない……体に深刻な不調があるわけでもない。

動作を妨害しているのは……私？


体を調べてみても私以外に私の行動を妨害している存在が見つからない。万已楽も途中で手を止めた私のことを不思議そうに見ている。


私の目的を私の感情が邪魔をする……。
私は今の万已楽を失いたくない？しかし、今までも感情を殺しながらやってきた、これからもそうすればいい。

私は、私を心の奥底に凍結した

やっぱり理解できなかったようです。

　

　

大きく首をかしげ。