「それじゃ、ししょーさんたちのところにいってみよー！！」


シュテルンのげんきなこえがあたりにひびきます。
それとははんたいに、猫はやっぱりうかないかお。


「・・・・・やっぱりこわい？？」


猫のかおをのぞきこみながら、シュテルンがたずねます。
猫はコクリとうなずきながらも、どうやらべつのことがしんぱいのようです。

『それもあるけれど…ししょーたちはいまどこにいるのです？』


「えっ？？」


そう、あいにいくといっても、ししょーたちがいまどこにいるかはさっぱりわかりません。
こまったしまった猫はうつむいています。
シュテルンもこれにはこまりがお。


「うーん・・・・・そうだっ！！」


ぱっとかおをあげて、猫にむきなおります。


「ねぇ、ししょーさんたちのにおいがのこってるものってない？」


『どうするのです？』


「においでさがせないかなって？？」


猫はむずかしいかおをして、ハナをすんすんとならしました。
しかし、


『よくわからないのです…』


と、ためいきをつきました。
たしかにいっきにはたくさんのひとたちがさんかしており、いろんなにおいでみちあふれています。
それにおしろのなかはだれかをさがすにはあまりにもひろすぎます。
もしかしたらもうししょーたちはおしろからはなれているかもしれません。


ですがシュテルンはめげません。


「たしかにロクもにんげんよりはハナがいいだろうけど、ぼくはオオカミだもんっ！！
においでさがすのならまかせてよっ！！」


だめでもともと、やらないよりはやってみようよっ！！といきごむシュテルンのひたむきさに、猫もこころをうごかされ、なにかないかとにもつをさがしてみることにしました。

やがてなにかをみつけたのか、そのてがとまりました。


『………これじゃダメなのです？』


とりだしたのは――ししょーのはね。
ぬけおちたのがにもつのなかにまぎれていたようです。


シュテルンはそのはねのにおいをしばらくかいでいました。
そして、猫とおなじようにはなをならし――


「うーん、やっぱりむずかしいねぇ・・・・・。
でも・・・・・たぶんだけどこっちからおんなじにおいがするきがする、かな？？」


ちょっとじしんなさげにまえあしでさししめします。

あてがあるわけでもないので、猫たちはとりあえずそれらしいにおいがするほうこうへいってみることにしました。















すすむにつれて、あゆみがおもくなる猫とシュテルン。
それもそのハズ。


『…ほんとうにこっちなのです？
なんだかすごいにおいがしてるのです…』


かおをしかめてはなをつまみました。


「うーん、このにおいがつよすぎてよくわかんなくなってきちゃった・・・・・。」


こまったようにいうシュテルン。


『それに小生、これとにたにおいにはおぼえが…』


と猫がいいかけたときでした。


「きをつけてっ、なにかくるよっ！？」


ぴんとたったみみをぴくりとうごかし、シュテルンが猫によびかけました。


やがてつよいにおいをまとったそれがすがたをあらわし――

ブルーノおにいさんはグッと、ガッツポーズをしました。

おにいさんは半ば興奮した様子でべらべらとそんなことを喋ると、満足そうに微笑みました。

お兄さんは去り際に、大きくいびつな形をした手をひらひらと振ると、
森の中の道をのっそりと歩いていきました。

小さく笑って、そんなことを言った。

なんだか勿体つけながら、「ルリアンナお手製10000PS」をヒラヒラと振って見せた。
どうやら本人は渋くてカッコイイつもりのようだ……

キュピーン！　という音とともに爛々と光る瞳でししょーを見遣った。

突如として伏せ状態から昇龍拳的なポーズで飛び起きた。

フフフ……とニヒルな笑みをロクに向けつつ、

と何故だかドヤ顔だ。
好敵手届けには、「好敵手になる人：住所・氏名欄」や「好敵手が未成年の場合の保護者による同意印欄」「証人欄」などがあるが、全体的に手書きで安っぽい印象だ……。
「なんとなくカッコイイから作った！」感は否めない。

覚えて居てくれた事、やっぱりと言われた事がどこか嬉しくて、耳をぱたぱたさせていた。
その様子はそれだけで先程の『キーエ』と根本的に異なる事がわかるだろう。

猫が首を傾げているように見えたキーは、慌てて弁解する。
「キーもわかんない」なんて、なさけなく笑って、ほんの少し沈黙して。
繋いだ手と手が強くなれば、えへへとキーは小さく笑った。

キーは無邪気にその言葉を口にした。
それはつまり、彼の命を終わらせるという事。
その重みを未だ理解し切れていないように感じるけれど。
「あなたという個体は終わってしまっても」「別のいのちにうまれかわるかもしれないもん」と、キーは言った。


けれど、ロクの続く言葉に綻んでいって。

言いながら、ほんのちょぴりガタガタと尻尾を丸めて、彼とは違う意味で涙目になっていた。
けれど、ふと、息を吐いて、
言葉にならなくなった彼の沈黙と沈黙を重ねてから、ぽつりと言葉を吐いた。

そう、しみじみと呟いた。どこか擽ったげに。そして、ぴぴん！と耳と尻尾を立てると、

犬のように尻尾をぱたんぱたん。思わずぴゃーんと飛びかかった。
そこは獣。ぴすぴすなんて、鼻面を押しつけたりぐりぐりしたいらしい。