<Days29>


「それじゃ行ってくるね」
「はい、行ってらっしゃい」

　私とルーシェちゃんは最近、交互に料理を作ってお互いに食べて貰ったりをしている。
　今日は私の順番で、これから市場に買い出しに行こうとしているところだった。

「そういえば……、ルーシェちゃん、ちょっといいかな？」

　私は出る前に何かを思い出したように彼女を手招きする。
　怪訝そうな表情を浮かべながら、彼女は私の方へと近づいてくる。

「何か忘れ物ですか？」
「忘れ物……、うんそうだね忘れ物」

　私は彼女に近づくとその顔をそっと手で触れると引き寄せて白い肌の頬に軽く唇を重ねる。
　彼女は私の行動に一瞬驚いたようにびくんと身体をすくめるが、嬉しそうに微笑んだ。

「な、何するんですか、びっくりしちゃいました……」
「ごめんごめん、ルーシェちゃんが可愛かったから、ついね」

　私はそう言って今度こそ買い物に向かったのだった。


　§§§§§§§§§§§§§§§§


「うーん、参ったなぁ……」

　私は道ばたの屋根の下で途方に暮れた。
　買い物が終わり帰路についたところで、突然の雨が降り出し途方に暮れてしまったのだった。

「うーんこれは……やみそうにないかなぁ？」

　私は空を見上げながらため息をつきながら呟いた。
　それでも雨が降るとは思ってなかった私は雨具を持っているわけもなく、どうすることもできずその場に立ち尽くしていた。

「もう一寸だけ雨が小降りになったら帰ろう、濡れるけど仕方ないよね」

　少しばかり先ほどよりは小降りになったようになったと感じられ、私がそう決意した瞬間であった。
　まるで空が私の言葉を聞いていて、それをあざ笑うかでもするように徐々にその勢いを強めはじめたのだった。

「ううっ、まるで狙ったみたいに強く……これじゃどうしようもないよ……」

　私は言っても仕方ないとは思いつつもそう愚痴をこぼすしかできなかった。
　雨が強くなり始めてからしばらくたって、小降りにはどう見てもならないだろうと諦めざるえないと思えてきた。

「余り遅くなるとルーシェちゃんに心配かけちゃうよね……」

　すでに帰るはずだった時間を大幅に過ぎている私はもう仕方ないと覚悟を決めた。

「よし、濡れるけど仕方ないよね、走って帰ろう！！」

　私はそう覚悟して、雨に濡れた道を走り始めたのだった。


　§§§§§§§§§§§§§§§§


「ただいまぁ」

　何とか自室に帰ってきた私はルーシェちゃんに挨拶をする。

「お帰りなさい、雨大丈夫でした？」
「全然ダメ……、思いっきり濡れちゃったよ」

　私はずぶ濡れの身体をルーシェちゃんの持ってきてくれたタオルで拭きながら応える。

「あ……」

　そんな私の事を見ていたルーシェちゃんが突然赤くなってその視線をそらした。

「どうしたの？」

　私は何故彼女が視線をそらしたのか判らずに、視線を下に移し自分の身体を確かめる。
　そこで私は今の自分の状態に気がつき慌ててその身体を抱き隠した。
　白地のシャツは雨に濡れすっかり身体に張り付き肌の色と身体のラインがはっきりと見て取れたのだった。

「ま、祀さん、そのままじゃ風邪引いちゃいますし……お風呂に入りませんか？わかしてあるから背中流しますよ」
「え？ル、ルーシェちゃん？」

　彼女なりの照れ隠しなのだろうが、その彼女の誘いに私は困惑するが私達はそのまま背中を押され、お風呂に向かったのだった。


TobeContinued……


　この日記はルシエ・ソルブランシェ（2010）さんをお借りしました。
　書かせて頂き感謝。

そう言って祀に微笑かけました。その表情にはすこし照れたような色も混じっていました。