不可思議な力場と広大な海に護られるようにして浮かぶその大陸は、意外にも猛毒に侵されていた。
外側に生息している動植物が紛れ込めば長く生きることは難しいだろう。
しかしそこは一見すると豊かな緑が生い茂り、小さいながらも種々多様な生物が生息する穏やかな大地に見えるのだ。
彼らは毒を糧として生きる、環境に適応したものたちだった。

土壌の成分、地層、そして遺跡を調査することで、その大陸がかつてどのようなものだったのか、私たちは理解した。
今外側の大陸を闊歩している者たちがこの世界に移住してくるよりもずっと昔。
最初にこの世界を支配していた者たちは、世界の中心に、自分たちにとって都合の良い場所を作り出した。
それは保留しておきたい問題をひとまず置いておく場所。いずれ片付けねばならないものの一時保管場所。
処遇に困る者、処分に困る物、解けない謎、後回しにしたい課題、それらを一手に引き受けてくれる、そんな場所だった。
彼らの手に余るものは全てそこに集められた。きっと未来の誰かが片付けてくれるだろう……
そうして寄せ集められたものによって、初めは小さかった島が巨大な大陸にまで成長する頃。彼らの住む外側の大陸は、些細なきっかけから始まった戦争で、あっけなく隅々まで焦土と化してしまった。
致命的な兵器が使用される間際にどうにか逃れた僅かな者たちは中心の大陸へと流れ着き、その時初めて、そこが蟲毒の器と化していることを知った。
しかしもう戻る場所はない。ここで生きるしかない。ずっと目を背け続けてきたことに対するツケを払う時が来たのだ。
過去を、歴史を、常識を、その身と心を全て捨て去り、ただひたすらこの猛毒の世界にて生き残るためだけに遂げる、進化への、
覚悟を。
彼らは選んだのだった。

光が集まり形をつくる……