リナの高らかな勝利宣言を受けて、オリヴィアが少し驚いた顔をした。

「・・・・・素晴らしい暴力ですね。このくらいでないと。」

そう言ってヴァルキリーを見上げた後、オリヴィアは自らの境遇を語り始めた。

「私は前王の娘です。前王は、王の座を新王に譲ったあと、戻ってきていません。ついでで良いのです、少し探していただけると助かります。」

（前王の娘なの…それにしても、この子の状況は気になるところね）

　世襲王制を敷いているのであれば、女子とはいえ前王の子がこんな周縁に隠されていて、仕えているのも護衛の２人だけ…という状況は不自然だ。
そして、この幼い少女は有力な情報をリナ達に与えてくれた。



「そうね…結果は保証出来ないけど、探す努力はするわ。こっちとしても、色々気になる事はあるし」

リナの返答を聞いて、オリヴィアが頭を下げる。

「ありがとうございます・・・この子・・・・・ヴァルキリーは、必要なら力を貸します。」

そして、オリヴィアは傍に控える２人の方に向き直る。

「ロメオ、ジュリエッタ。転移陣の場所を教えてあげて。」

「は、はいッ！！」

２人の中で若輩に当たるであろうジュリエッタがあわてて姿勢を正す。その横で、ロメオが

「・・・・・。・・・・・こっちだ。」

と、落ち着いた様子で、リナ達を更に奥の転移陣へと導いた。

「ここから城内のグリーンパレスに繋がってるから、好きに暴れまわってきちゃって。」

ジュリエッタの言葉に、リナは露骨に訝る。

「………なんか、さっきの王女殿下の話より物騒なんだけど」

そんなリナの様子を見て、ロメオが言葉を補った。

「新王パラダイスは・・・・・様子がおかしい。新王が来てから王城周辺のエンブリオが増えた。新王自身もエンブリオだと言われても信じられそうだ。」

「動き的にもそうよねぇ。・・・私達はオリヴィア姫の看護・警護で動けないから調べようが。
・・・ああぁぁ一揆の連中が羨ましい！！」

膠着する世界の状況で、何も出来ない自分の境遇に苛立つジュリエッタが奇声を挙げる。
とりあえず、リナは王室の異変の程度と、ジュリエッタが自分に何を期待しているのかを理解した。

「なるほど…思いっきり暴れて、あちら側の核心を少しでも引きずり出せってことね？」

しかし、城内ともなれば、警備は厳しさを増すだろう。
準備が必要だと感じたリナは、機を伺って突入する旨を２人に伝え、屋敷を後にした。



　戻った後、リナは自分が持っている携帯情報端末で、考えをまとめるべくメモを取っていた。
紙のメモは直感で書けるがかさばってしまう。この状況では、リナにはそれが好ましく思えなかったのだ。　









「…とりあえず、今の事態を解明するのに必要なのはこのくらいね…」

簡単にメモを終えて、リナは端末を置く。

「後は、事態を収拾して未来につなげるための手がかりも欲しいところだけど…どのみち、メルンテーゼに元々住んでる人から色々聞かない事には始まりそうにないわ」

一つ、重い息を吐いた。