例えばこの世界が丸ごと虚構であると知ったなら、君は何を思うだろう。
華やかな夢と、理想からかけ離れた現実。
それでもいつだってヒーローたちは、ひとときの甘い夢を捨て、現実を取り戻すため戦おうとする。

夢はいつか終わるもの。けれどもそれは、現実とて同じこと。
ならば何が違うのか？
一つの答えは、夢には続きがないことだろう。
目覚めればそれで終わり。自分が見た夢の世界を誰かと共有することは叶わず、夢の続きは訪れない。
全て無に帰す。意味のないもの。


ではそれが、もしそうでなかったとしたら？
皆が見る、一つの同じ夢。
命がある限り、紡がれ続ける現実ではない虚構の世界。
それでも人は、夢の世界を否定するというのだろうか。
真の幸福とは、現実にしか存在しないものなのだろうか。

問われた彼女はそう答えた。

と、胸元に空いた切れ目をびょんびょんとひっぱる。

ポーンと軽くはじかれるラーフィー。全身毛まみれである。
華麗に着陸すると、ぶるぶると体を大きく振るう。そのたびに体についてた毛が舞い上がり、クシュンクシュンとくしゃみをする。