『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの料理〜』



　とある世界、日付不明、とある部屋にて――

　ぽちの一言が始まりだった。
「人間って特別な日は大切な人にチョコレートというお菓子を
贈るんだって前に言ったよね。その後、お返しにお菓子等を
贈るんだって。五日後が丁度、そのお返しの日だね。ボク達も
マスターにお返しのお菓子を贈ってみる？」

　直接ではないが、マスターは俺達に贈り物をくれた。
俺はロボットである故に食べ物は無意味なので、ロボット用の
オイルだった。(一応、食品等を食べる機能はあるのだが、
水以外は摂取出来ないため、人間のふりを必要とする場合以外、
無意味な機能である。)

　ぽちはお菓子の映像を出した。色んなお菓子の映像が
くるくると回る。
「今度はマスターの好物を作ってみたらどうかな？」
「マスターの好物？　それって何だ？」
　くるくると回っていた映像が止まり、一つの映像を
拡大した。饅頭だった。様々な饅頭の映像が回り始める。
「うん。多分だけど、マスターの好物は饅頭じゃないかな。
休憩中に何度か饅頭を食べているの見たことあるよ」


　調理場に立つ。材料はぽちの指示通りに揃っている。
問題はない。
　大きく息を吸い込んで深呼吸。よし、いける。
「あ！？」
　呼吸を整えたその時だ。電子レンジが爆発した。菓子作りと
同時に試そうとしていた料理は失敗したらしい。
「あらら。試したいという好奇心は判らなくもないけど、
危険だからそれは絶対にやっちゃ駄目だよ」
　くすくすと笑う声。振り返るとこの前に出会ったレアという
少女が居た。今日は白いワンピースでお洒落をしている。
「また会ったね。チョコのお兄ちゃん」
「君は……レアじゃないか。久しぶりだな」
「久しぶりだね。お兄ちゃん。もう一回、一から料理を
教えてあげるね」



　その頃、彼はその様子を見ていた。彼にそれは語る。
「健気な努力に免じて、少し優しくしてあげたらどう？」
「俺だって鬼じゃない。出来れば普通に接したいさ。
接したいが……怖いんだ」
「……怖い？　彼は無害なロボットだよ？」
「それは判ってるんだが……無理だ」
「どうしてなの？　何を恐れているの？」
「あいつの持つ記憶が……もし、蘇ったとしたら……」
「……大丈夫。彼はボクが監視している。
その記憶に触れること、その記憶が蘇るなんてあり得ない。
だから、安心して貴方は貴方の戦いを続ければいい」
「……済まない。この戦いが終わったら、全てを話そう」