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　○月×日　タンポポ荘　某時刻　
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　クーリアと契約したエンブリオのうちの一体、ララン。
　シャルロッテとクーリアが話している部屋から、扉を一枚隔てた向こう、ひとり思案にふけっている。

　クーリアを死なせることが目的であるならば、攻城戦でシ・ドゥがクーリアの手助けをしていることの説明がつかない。
　それに、シ・ドゥはいつもクーリアの傍にいる。
　そんなまだるっこしいことはしないだろう。

　…いいや、アレは絶対に勘違いなんかじゃないはず。
　それに、クーリアの抱えている問題だって魔力絡みの話だ。
　あの違和感が無関係だなんて、そっちの方が不自然ってもんだ。


　じゃあ………クーリアが病気でいることで、シ・ドゥになにかメリットがあるだろうか…？


　逆転の発想というやつだ。
　行動から目的を推理してもわからないのなら、目的を先にでっちあげてみる。

　アタシはサキュバスのことはよく知らないが、サフィニアの話を正しい前提で考えるなら、クーリアの体調を治すには、サキュバスの能力で人間から吸魔することが必要不可欠だろう。
　しかしクーリアは、あの子の性格から言って、人間からは吸魔できない。
　吸魔されることに、リスクが伴うことをあの子は知っているからだ。
　吸魔された人間が死ぬ可能性があると知って、あの子は人間から吸魔することはできない。
　クーリアとはそういう子だ。

　しかし、サフィニアは加減を誤ると死に至る可能性があると言ったが、吸魔によって、人間が死に至るというのは、つまり、その人間の持つ魔力、すなわち生命力を、クーリアが必要とする魔力量が上回ってしまった場合のことだ。
　逆に言えば、圧倒的な生命力を持つ人間であれば、吸魔による死のリスクは殆どないと言える。

　…尤も、今のクーリアは、魔力が尽きかけていて、必要な魔力量もかなりのものになるはずだが。

　つまり、クーリアに必要なのは、大量の魔力を保有した人間であり、
　クーリアの吸魔に耐えられるならば、大量の魔力保有量が約束される。

　ということだ。

　例えば、シ・ドゥがなんらかの理由で大量の魔力を必要としていて、…クーリアを使って、大量の魔力を持つ人間を探している…というのはどうだろうか？

　辻褄は合うとしても、どこにも根拠はない。

　かと言って、クーリアに直接シ・ドゥに対する疑惑をぶつけるのは愚策だろう。
　クーリアにとって、シ・ドゥは友達らしいから、怒るか、悲しむか……
　どっちにしても、警戒させるどころか、意固地になってシ・ドゥに味方することは間違いない。

　ロッテはそっとクーリアちゃんの手を握った

　

　（おまわりさんこっちです！）