目当てのものは手に入れられたか、二人とも？
ま……心配しないじゃあなかったんだぜ。

お帰り、オルガ。

この二階廊下の人気が妙に少ないのは、オマエさん達の影響か？
まあ、ともあれ付加を宜しく頼む。

強さの甘美さ、か……いや、そうだな、そうしたものはたしかにある。
赦されるものの甘美さとは違う、挑み続け、勝利し続ける者の甘美さ。
それなら趣味に合わないこともない。

――美に、わからない源泉なんてものがあるのか？
あんたの毎日の飽きもしない身支度や手入れは、
あんたの持って生まれた天性を、源泉を、涸れないよう大事に育て上げている仕事だと思っていたよ。

はは、ま、たしかにそうかもな。私も素直、あんたも素直だ。時どきに振り捨てたものがあり、見捨てたものがあり、しかし歩み pas は止めなかった。
突きつけてきたいくつもの否 pas は、それでも痛みを伴う。
痛みには……報いが欲しい。
それが赦しという形をとることもあるかも知れねえ。

愛しい者、か……そうだな。懐かしい言葉だ。
あんたの天秤の片側で、軽さのために選ばれなかった愛しい者たちが、
やはりいたのか？

革命者はどいつもいくらかは自分の中の火種を誇りかに思っている。
だからその評価は嬉しいがね、フィガロ、
いや……あんたに嫉妬してもらえるということが嬉しいのかな。

時は流れ始めている。時流はいまや王の誅殺で、庭に暮らしていた時から私はこの好機を待っていた。時が流れ始めるその地点を。
何度も図版の上や頭の中で描いた棋譜の、それでも実情の戦争が始まれば予想を離れて未来の行方が知れない。
時としてそれは私たちの望ましい形態を逸れようとするだろう……
フィガロ、その時にはつかみとらなくちゃいけないな。まだ凝る前の熱い未来、不定の時間に素手を突っ込んで。形をとる前の敗着から、無理にでも得るべきものの存在を。花の咲く場所を。

……私はいくつかの挫折を通してここにいる。
いくつかの革命の挫折を……
その中にはいつもいくらかの仲間がいた、あんたたちのように。

これだけの長い時間を共にいたのは初めてだがね、
今度の革命は、そもそもこの世界を訪れてから、
始まるまでが長すぎたから……

大きく重い扉を、手を取り合って開けてきたということ、
そのことがむしろ強くする恐れもある。

掛け値なしに最悪の未来は、
私があんたたちを撃つことだ。

私は革命者だ。私にとって私の革命は、何より第一に私を追い立てる……
私は仲間殺しをやってきた女だ。
革命のために。
そのたびごとにそれぞれの理由で、いつのまにか抜き差しならないところにいた。
個別のはずの選択の終着が、しかし運命のように反復した。

今は……そうなる気は少しもしねえ。あんたたちは私の仲間だ。
それでも私は反復を恐れているのさ。……この革命の先にある、
捉えることのできない不定の未来に潜む蠍の一刺しを。

さあ、お前が持っていておくれ。

あたしとあたしのドロモマンヌが、
あの絹の亡霊を引きつける……
長くは保たねえ、頼むぞ。

オルガ、ああ、良かった――、ちゃんと会えたね。
それじゃ、行こうか。

私に歯向かおうなんて、一千万年早くない？

私に歯向かおうなんて、一千万年早くない？