>>ホットロッド

>>まだら

>>イシュメール

　まだらのもとに、一通の手紙が送られてきた。

　相変わらず封には黒インクで猫の手形が捺されており、煤も多少ついている。
　……どうやら煤を払おうとしたのか、黒く滲んでしまったようだ。
　未だ未熟で律儀な筆跡の、メルンテーゼの言葉でこう綴られている。


「親愛なるまだら殿へ

こちらこそありがとう、まだら殿。使ってくれて何よりだ。
私はこうして筆を取ることは今までの人生においてなかったから、
おそらく緊張して変な文字になっているだろうね。此度も。

私の腹事情は今のところ問題ない。
何せネイベール殿が食事に連れてってくれると約束してくれたし、
《ダルシャナの事典亭》という良い酒場を見つけたもの！

でね、もしまた出会うことが叶うなら、まだら殿とも食事に行きたいな。
まだら殿もお勧めの店があったら是非教えて欲しい。

私は今、砂地に居るよ。間抜けなことに道を間違えたらしい。
城に行きたいんだけどな。
もしかして、私達はすれ違ってるのか？　だとしたら残念だ。

闘技大会は初めて参加することになったけど。
心の底から昂ぶっている。こういうの、私は大好きみたいだ。

でも（と躊躇いを含んだような言葉に横線が引かれている）
心強い仲間にも恵まれて至極僥倖さ！

君やネイベール殿の戦う姿も、是非拝見したい。
欲を言うなら戦いたいのだけれどね。こればかりは運命に委ねよう。
ダメだったとしても君達を応援するよ。頑張ろう。

　＊＊＊＊＊

長々としてしまったが、贈り物の方ありがとう。
これ、凄く、かわいいね！　同時に力強さを感じる造形だ。
拾ったって言うけど、ええといや。うんよかった、嬉しいよ。

ケット・シーは相変わらずむくれ面のままだったけど、
またキノコ料理食べたいんじゃないかな。
以前、泡吹くほど喜んでたしね。

それじゃあ、また会う日までお互い壮健で。

追伸。まだら殿は絵心もあっていいな。料理も上手だしさ。
私も物は試しと合成技能の鍛錬を始めてみたよ。何が作れるだろう。
それとケット・シーを描いてみた。難しいね、絵って。

ナスルより」

イシュメールは銛を構え、敵の動きを目と気配で追った。