で、俺のところに逃げてきたわけか。

ごめん。

カラバ。君の言う通り、ボクは上級妖魔の風上にもおけない最低の下種野郎だった。

ボクはこの魅了の魔眼は・・・もう一生使わない。

使わないんだ・・・。

お前は下種などではない。だからここに逃げて来たのだ。違うか？

こうなることはわかっていたさ。だから殴るのを止めたんだ。

そうだったのか。まるで三文芝居に見えただろう。興醒めもいいとこだ。

展開や先行きの読めない人生だけが面白い中身のある人生と言えるかね。俺はそうは思わん。

俺はお前が読め読めでベタベタで、在り来たりの決断をする人間に育ってくれて本当に喜んでいるよ。
ま、現実問題としてこれからのことはちょっと考えないといけないけどな。

人間・・・？ボクがかい？

そうだヘリヤ。俺達は妖魔だが、人間性は大事に育んでいかなければならない。

だ・・・誰だ？もうアウレリオ派に通報がいったのか？

・・・。

ヘリヤ？ヘリヤ！？ここにいるんでしょう！？

その声は・・・ル・・・ルイーザ？

来たか。

え？

よく来てくれた。入れ。

ありがとうございます。

ヘリヤ、黙っててゴメンね。

カラバさんとは、実は秋の終わり頃にお会いしていたの。

私が夕食後に一人で夜風にあたりに森に出たあの時・・・。

ルイーザ・イブリスだな？お前に話したいことがある。

貴女は・・・ヘリヤの仲間の妖魔の方ですね。

察しがいいな。いや、あいつの嘘は粗が多そうだからな。

私はカラバ・ザ・ロングブーツ。まぁこれは渾名みたいなもんだがね。
君の言う通り、ユベールの騎士だ。

あの子が少なからず故郷とまだ繋がってることは薄々感づいてはいました・・・。

君には多大な迷惑をかけていて申し訳なく思っている。
もっとも、それについては君自身はまだ何も気づいてないだろうがな。
そのうえふてぶてしい話だが、今日は君に頼みたいことがあってきたのだ。

アイツは恐らくもう少ししたら君達の元から逃げ出すだろう。

もし、君達がそれでもヘリヤのことを必要とするのなら・・・

そうして、ここの場所を教えてもらったのよ。何かあったらここに来なさいって。

・・・。

その場でお前がかけた魅了を俺が解いておいた。まぁ、どっちかというとそっちが主な目的だったんだ。
万が一にでもお前が本当に彼女を殺そうとする場合に対して、何の保険もかけないわけにはいかなかったからな。

すまなかったな。本当は知った時点ですぐにでも魅了の解除はしておきたかったんだが。
君がこちらの事情を話して大丈夫な人物かを伺うために、どうしても時間が必要だった。

じゃあ・・・昨夜のボクの一人相撲も全部正気のまま見られてしまったのか。恥ずかしいな。
さぞ滑稽だったろう。

・・・なんで逃げなかったんだよ。もう一息で殺されるとこだったじゃないか。

止めるって信じていたからよ。

違う・・・。ボクは本当に殺すつもりだったんだ。悲しい気持ちはあったけど、止めるつもりはなかった。
もしあの場で急に感情にのまれることがなければ・・・。

ボクは・・・君を殺して・・・

その感情っていうのを最後まで信じてたのよ。そりゃもちろん、すっごくすっごく怖かったけど。

ルイーザ・・・ボクはもう、君に合わせる顔がない。術が解けたなら、ボクが君にさせたこと、すべて思い出したはずだ。
イブリス教会や水神教の情報を探らせるために、長期間に渡って・・・時にはかなり過酷なこともさせてきている。
君はボクを恨んで、憎んで、当然なんだ。

そうね、ヘリヤは私に酷いこと一杯したわ。術が解けてからはしばらくショックも大きかった。
でもね、結局それで許せないとか、そういう風にはならなかったの。なれなかったのよ。

どうしてだい？友達だからって言うのかい？

いいえ、家族だからよ。

月並みな言い方だけど、家族は選べないもの。

どんなに酷いことをされたって、無茶なことを言われたって。

愛するしか、ないじゃない。

・・・。

ヘリヤ、これからも私に酷いこと、一杯なさい。私は一つ残らずそれを受け入れてみせるわ。

たとえ貴女がいずれまた私や、孤児院の人達を皆殺しにするかもしれないとしても、私は今貴女を連れて帰る。

これは私のエゴよ。私も家族だから、ヘリヤにエゴをぶつけるの。

はは、ルイーザ。無茶苦茶だぁ・・・。

だから、酷いこと一杯したのは叱ってあげるから・・・。

戻ってきて。

ルイーザ、ボクは妖魔だ。おまけに百年の『穢れ』を抱えた札付きのヨゴレモノだ。

どう足掻いても『人』になることは出来ない。君たちとは違う。

でもね、それでも許されるならボクは君たちと一緒にいたい。生きていきたい。

『人間』になりたい。・・・そうか、『人間』になりたいんだ。ボクは。

なれるわよ。いいえ、貴女の国の妖魔種っていうのはそういうものなんでしょ？ヘリヤいつも言ってたじゃない。

ヘリヤ、神様は例えドアをお閉めになったとしても、必ずどこか別の窓を開けておいてくださるものなのよ。

絶対に一緒に生きていける道があるわ。どこかに方法がある。

・・・。

カラバ・・・ボクは・・・。

ボクは・・・！！！！

マリアを・・・殺せない・・・。

殺せないんだ・・・！

・・・。

ヘリヤを連れていきます。この子はもう、私達のものです。

くっくっく、俺はもう恥ずかしくてしょうがないから早く行ってくれ。

カラバ、このままボクを行かせるつもりか？

つもりも何もあるまい。お前がイヤリングを取ったら俺は簡単にケシズミさ。そうだったろう？

もう、そんなこと出来るかよ・・・。大体、エリスはどうするんだ。

その子が言ったろう。必ずどこかに方法がある。

・・・ヘリヤ、本当に下種なのは俺達大人のほうじゃないか。そうだろう。

俺には命を賭してでもお前達を守ってやる義務がある。ユベールの騎士としてではない。一人の『人間』としてだ。

エリス・サタナエルは誅されるべき存在だ。
だが、その為にお前達子供の人生が踏みにじられることなどあってはならないのだ。

ここからは、俺の戦いだ。

ヘリヤ・・・！

なんだよ。ボクは貴女のことを殺すと言ったのに。いなくなったほうが安心じゃないか。

そうですね。おかしいですね。どうしてでしょう・・・。

ボクはね。ユベールを捨ててきたよ。

偉そうなこと言ったけどね、情に流されたのさ。笑ってやってくれ。

おまけ〜妖魔の国、ユベールに関するサブストーリー。
カラバの帰郷。偽島時代のキャラのアフターなど。
http://arcana.mints.ne.jp/ikki/daily_site/intermission1.html
http://arcana.mints.ne.jp/ikki/daily_site/intermission2.html

この番組はEno667、691、1231、1646の四局ネットで放送しております。

んじゃお便りいってみよか！！

PN．『会員ナンバー二号』さんから
『シヤンハイルのおいしい地酒、またはおすすめの飲み屋さんを教えてください』だって！

マルタはお酒はよくわかんないので、シスターマリアどぞー！

シヤンハイルのお酒はお水が美味しいのでとても口当たりが良く好きなんですけども…

やはりコーネリアのワインが好きで、今でも時々市場にあるのを買っています

特にですね！領内のシャルロで作ってるCharles-Saumurという銘柄のワインなんですが、少し値は張るのですけどいい色と香りでして寒い日の夜にホットワインにして飲むととてもいいんですよ！

あとは、そうそう！白ですと…

どうせお子様だよぶどうジュースが好きだバッキャロー！！

とはいえお酒も飲んだことがないわけじゃないんだ。
シャンパンなら飲んだことあるよ、飲み方間違えてぶっ倒れたけどね！

地酒ねえ。興味はあるんだが、シヤンハイルってどんなんがあるんだろうね。
リヴァランとかそういうの詳しいんじゃないの？

そういやルイーザがユベールの白ワイン飲んだことがあって、すごく美味しかったって言ってたなぁ。銘柄とかは知らないけど。

なんだこの質問は…

ふむ…前に言った店の目玉の入った…

あー、いや

そうだな、その通りの向かいにある店が出す果実酒はどれも絶品だ
飲みやすくて良いぜ？

また？って言われるかもしれないけど、いつものカフェかしら？

街に行っても、知らないお店に行くのは怖いし無駄遣いもできないもの。

あ、それでお気に入りなんだけど、ミックスジュースがお気に入りよ。

何種類かその時においしい果物を絞って飲ませてくれるの。

オトナっぽく見えるけどお茶は苦いから、飲めるフリはするけど、実はそんなに好きじゃないのよね。

害意か・・・まぁあからさまな殺意は感じられないですね。でもワタシ、アノカタナノモチヌシがシスターやキョウソにキバをムクのをナンドもナンドモみたからさぁ

それにあの刀・・・まぁ部外者がどうこういっても仕方ないか。

・・・そういう考え方もあるのか。雨の日も働いてたし、遊びの相手をさせられるのに、晴れも雨もなかったから、思いつかなかった。・・・ワタシは足の不自由な方や、貴族の方々の不満を和らげる道具と割り切ってた。

…僕の国はもう滅茶苦茶でした。
国の威厳を示したい人と、領土を拡大したい人と、目的を達成したい人など…。
それぞれやってることがバラバラで、どこか噛み合わなかったんです

将軍職の中には、血筋がどう、とかこだわる人もいたみたいですし…。
なんというか、代々続くようなすごく根深い問題に思えました

革命が終わった今、あの国がどうなってるのかまでは把握してませんが…。
何れにせよ、建て直しはすごく難しそう…

まぁ、だからこそこういう場所に来て色々と調べてみてるっていうのもあるんですけどね。
信頼できる味方…欲しいです、ホントに

あはは。もう少し明るい話もしたいところですけど…。
僕はこういうことしか知らずに生きてきたから…何話せばいいか分からないんですよね。
だからこそ、こんな状態になってるのかもですが

捨てちゃえば…かぁ。
そうですね…あんまり国の再建だとかにこだわらないでもいいのかも？

ただ、そうするとしても兄さんを迎えにはいきたいですね。
まだ国に残ってるはずなので……

…なんだかヘリヤさんと話してると、不思議な気持ちになります。
話上手な大人の女性と話してる感じがするというか…。
似た悩みを共有してる相手に思えるというか…

あはは、何言ってるんでしょうね

主よ、子供達をお守り下さい…

我が名はヘリヤ・イブリス。シヤンハイルのはぐれ妖魔だ。
上級妖魔の誇りにかけて、絶対にボクの家族たちを傷つけさせはしない。

…もう、油断は出来ない…

フロントは任せてくれ
マリア、ヘリヤ、ノエミ…いつも通りよろしく頼む
それじゃ往こう…。

力を見せろって、もったいないからイヤ。

ん？なんだ？餌か？

ん？なんだ？餌か？

我が名はファフニール・・・・・結構沢山いるらしいぞ。

ん？なんだ？餌か？