バレンタインが近い。
　バレンタインは毎年、チョコレートを家族やご近所に配ってたので、大量生産は結構得意だったりする。
　ん〜。湯煎にかけてつくるのは大変だし、刻んだりココアパウダー使う奴を中心に作ろうかな。
　一部果物の好物が分かってる人には湯煎かけてチョココーティングしちゃえ。
　と、大まかなプランを立てて、アズちゃんに材料を依頼したのが約2週間前。
　バレンタイン前日にアズちゃんはしっかりと持ってきてくれた。

　あれ？
　失敗のことを考えての予備にしては多くない？？
「私も作るー！」
　なるほど。
　クッキー系をアズちゃんは作るらしい。
　一部任せよう。
　私はチョコを刻んで、アズちゃんは粉類を振るう。
　お菓子作りって一種の格闘技だから無言になるよね。

　そこに。
「あのね、萌ちゃん」
　アズちゃんが声をかけてきた。
「本命チョコって……作ったことある？？」
「…………ないなー。義理か友ばっかだねー」
　女子には全力で作ったチョコ、男子にはタッパでつまめるかち割りアーモンドチョコとかほんとに配り歩いてたな。
「そっかー」
　もくもくと作業を振るう私たち。
　……ん？
「本命作るの？アズちゃん」
「っふぇ！？」
　私の声かけにかぶるように粉が派手に飛び散った。
「う、うん……。一応、伝わらないだろうけど好きとは言う、つもり」
「そうなんだー」
　おお、顔真っ赤じゃん。
　超可愛い。
　年頃だし好きな人ぐらいいるよねー。
　サクラちゃんのところにアズちゃんと同じ年ぐらいの、綺麗な子がいた気がするから彼なのかな？
　なんか複雑そうだからあんまり突っ込まないでおこう。
「頑張れ。いつか伝わるといいね」
「……うん」
　そういえば変わった型があったなー。クラゲ？？よく見つけてきたもんだわ。
　……恋する乙女は可愛いな〜。
「あの、萌ちゃんはこのハートのケーキ型どうして用意したの？」
「へ？」
　あれ？そういえば頼みはしたけど……。
　どうしてだっけ？
　ヒートくん（135）用に用意した覚えはあるんだけども。
　大きいからなのかな？いや、だったら円形でいいよね？
　ん〜〜？？
　気がついたら思いっきり首をかしげていた。
「なんとなく？なのかな？？」
「そっかー。なんか、萌ちゃんらしいね」
　くす、と笑われちゃった。
　ほんとわかんないんだもん。笑わないでよ−。


　たわいも無い話をしながら。

　あげる人のことを考えながら。

　甘い臭いにちょっとむっとしつつ。

　
　ふぅ。出来たー。


　喜んでもらえるといいなぁ。

現れたモグ翁の姿に驚きの表情を見せる。