立て続けにエンブリオの解約を経験し、少なからずショックを受ける銀髪の少女に対し、当の本人達は至って冷静に構えている…ように見える。

　思いがけぬ言葉にはっと気付かされれば、首を横にぶんぶんと忙しなく振り始めて。その挙動に両肩に腰を下ろしていたピクシーのグラナとサラマンダーのルイが振り落とされかねないとばかりに、必死に服にしがみ付いていた。

　ちらと視線を後方に向ければ、先日エンブリオ契約したジャックオーランタンが不満そうな表情を隠すこともなく様子を伺っているのが見て取れる。

　南瓜頭のエンブリオにそう声を掛けたものの、露骨に嫌そうな態度を示すと姿を消してしまった。主人たる男の元に報告に戻るためでしょうとはヒュドラのラングルの言葉である。

　一度、首を縦に頷いた後、罰が悪そうに今度は横に二度、頭を振って断りの意思を示して。

　男の足取りを追うべく歩み出せば、それ以上の言葉は不要とポーンのヴァランセも黙して追従するのだった。


　森林を更に突き進んでいくと、男が冒険者と思しき女性と話し込んでいる姿が目に飛び込んできた。男の背後では警戒するように白狼とオコジョの姿も見える…が、どうも二匹同士で牽制し合っているようにも見て取れるのは普段のやりとりを見慣れているからだろうか？
　その二匹からも離れて南瓜頭のエンブリオも興味なさそうに主と冒険者との交渉を眺めていた。

　間もなく交渉が纏まったのか、「よろしく」と言葉をかけてくｒ相手の顔を初めて見て、思わず息を呑んでしまうのを銀髪の少女は自覚した。
　冒険者の女性の目を覆うように布が巻かれていたからだ。しかし、こちらの挙動に気が付かないのか…或いは把握した上で、変わらぬ対応を続けているのか、改めて挨拶を交わされれば、気を取り直して自身の名を告げて挨拶を返す。

　どうやらお互いが知りえる情報の一端を教えあったようで、どちらのルートを先に取るべきかと再び交渉に入る二人の様子を見て、よくよく見れば年端もそうは代わらない女性の冒険者をまじまじと見つめてしまうのだった。


　やがて、進む進路が決まればどちらともなく、森林を更に奥へと突き進んでいく。男が少し先に位置取りしている事から、どうやら男が知る場所を先に経由してから、女性の冒険者が知る場所へと赴く事となったようだ。
　奥に進むに連れて、森林に差し込んでくる光量も乏しくなってきてるようにも感じる…そんな中にあっては立ちふさがる相手も凶悪そうな姿が増えてきた…ようにも見える。
　今度立ち塞がった相手は、何処かで見たような南瓜頭の影が一つと、その嘴が特徴的な鳥っぽい影が二つ現れ出でた。

　男と冒険者の女性は一度、目視で確認すれば互いに一挙動で影を一つずつ文字通りあっという間に屠ったのだった。その呆気なさに敵が弱いのかとさえ錯覚してしまうほどだった。だが…

　一体となった残る影も必死に応戦するも、一度傾いた流れを変えるには至らずに戦いは終結を迎えた。

　そう思いを抱きながら、腰に下げる刃の鞘に手を伸ばせば握るその手に力が篭るのを自覚せずにはいられなかった。。。

　
　　　　　　右手に、魔術力場を形成した。

　
　　　　　　興味深そうに手に取った。

　
　　　　　　静かに笑って、右手に魔術力場を形成した。