小さな農村で退屈な暮らしをしていたアレックス。
彼女がまだ年若い頃、同じ村にディーンという幼くして流行り病で両親を失った、身寄りのない少年がいた。
外部とあまり交流を持たない村で同じ時を過ごすうち、２人は次第に惹かれあうようになる。
べったりしすぎず、かといって遠くに離れるということもない。
２人の関係はそのようなものであった。


――あの日、数十年ぶりの大凶作に沈む村に、城からの遣いがやって来るまでは。


先王がその玉座を退く数年前の話である。
その時、城では大々的に新たに王に仕えようという若者を募集していた。
大都市はもちろんのこと、小さな村々にまで直接遣いを派遣していたこの募集は、何か不穏なものを思い起こさせるものであった。

しかし、村の若者たちの中には、この農村で代わり映えのしない、土にまみれて生きる質素で素朴な生き方をすることに対して、抵抗を覚えるものが数多くいた。
アレックス自身もそのくちではあったものの、この件については妙な胸騒ぎがして、否定的だったのだ。

だが、ディーンは最初に遣いがやってきた日からぴったり一月後。
人々の眠る夜のうちに、アレックスへの伝言を残して姿を消す。

『必ず、迎えに来るから――待っていてくれ』

行方もしれずしばらくした後、村には城からPSの袋が届けられた。




思い返してみれば、確かに最初の遣いがやってきてから、彼の様子はおかしかった。２人でいる時にも時折物思いに耽り、もともと多くない口数はさらに減っていたのだ。
アレックスも様子の変化は感じていたが、強く言葉に出して問いただすようなことはしなかった。それは今までの２人の関係性を壊してしまうように感じていたからだ。

ディーンの行動が抑えきれない外の世界への欲求のためだったのか、それとも不作にあえぐ村の助けになろうと思ってのことなのか。

それを問いただそうという行動に起こしもせず。
彼女は無為に時を過ごし、彼を忘れようと別の男と関係を持ったりもして。


そして最終的には、妖精の誘いに乗って、世界を抜け出した。

　クロエはなんだかよくわかっていなさそうな表情をしつつ

　クロエはアレックスの問いかけに対し、少し思い出すような仕草をしつつ顔をあげて

　なんとも要領の得ないことをしゃべりながら、ふと考えて

（扉越しに青年に諌められると歯を見せて笑い）

（無駄に身振り手振りをしながら）