Day/18.0



『そういえば、時期ですよね』

　会話の最後にリキュリアは話題を振ってきた。
こいつの話は主語が無いことが多いので咄嗟のリアクションに困る。

「降誕祭ね」

　少し考え、思い至る。世界で一番有名どころの神様のアレだ。

「どこの世界でもこの時期に似たようなイベントやってるよね。すごい不思議なんだけどなんでかしら」

　地域や世界によって程度の差はあるようだが。
　ちなみにアリスシアの世界では宗教は割と自由なため、この手のイベントはだいたい網羅している。

『もう概念とか色々超えてるんじゃないです？25日の人は』

「一体いくつの世界に影響与えてんのかしら……」

　自分の立ち位置を思い出しながらうめく。あまり笑えない話ではあった。
とはいえ現状、自分らに問題がない以上は関係ないのだが。

「で、それがどうしたの」

　聞いた。こいつが話題を振ってきたということは続きがある。

『お姉さんが来てましたよ』

　調子を全く変えずに返ってきた声を聞き、たいした話題ではないと判断した脳が右から左へ流しかけ。
　思いとどまり、思考が少し止まり。
　その言葉の意味を頭の中で繰り返して。

「……ああ？」

　アリスシアは聞き返していた。自分でも分かるほど、ものすごくドスの効いた声だった。
　全く構わず、リキュリアは続けてくる。

『シアへの今年のプレゼントは何がいいと思うか相談されました』

「おい」

『面白そうなのでシアのキーホルダーの魔改造キットとか言っときました』

「おい」

「え、あの、ちょっと」

　それを一緒に聞いていたキーホルダーもうめいた。

『把握して満足したのか帰っていきました』

「聞け！」

　結局、話の終わりまでアリスシアの叫びはすべて無かったことにされた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　***多分続かない

突然の暴挙に思わず肩をびくりと揺らし

目を閉じ、呼吸を調えて神経を集中させる。
早口に異国の歌のような言葉を唱え始め。

ふわ、と風が彼女の周りにまとわりついた。
大鍋が魔女の前に立った。

　

　

ｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯ（←マップを切り替える音）