他愛なし、と呟くと後々ひどい目を見る・・・と言うのはどこの国の迷信だったか。
庭師の阻む先へは、何事も無く通過させてもらった。
砂地に潜む相手もまた、同道した者らの働きによって蹴散らされた。
・・・目当ての契約者は、出なかったが。

とまれ、主だった番人では現状、深奥から出てくる原生生物やエンブリオと同格程度なのだろう。
それだけ、今の私の力も強力なものになってはいると言う証左でもあるだろうが。

ただそれでも――以前、私が振るうことのできたものには程遠い。
これより強大な敵を倒さねば、ならないのかも知れない。
あるいは、苦行とも言えるような難所を、乗り越えなくてはならないのかも知れない。

わたしはそのような、求道者の如き生き様は出来はしない。
弱まった自分を客観視し、それを補う動きを経験と外部からの補正で賄う。
自身を高みへ運ぶと言うよりは、落下しないよう踏ん張る姿の方がほど近い。


昔は良かった――などと嘯く趣味は無いが、そう口にする人間の気持ちは解らなくもない。
結局それは、得意だった自分のやり方が通用しなくなることを実感するからだ。
変化できなくなった者共通の、口癖なのだろう。

力を保ち、常に変わり続ける。
その何と難しい事か。

ごそごそとフードを上げると、その下にあるものを見せます。

三対の小さな赤い目と、耳のところにある二対の触覚を見せました。
そうしてから、すぐにフードをかぶり直します。

ぺこりと頭を下げました。

さんざんな結果は、あまり好きではないです、と、ため息を吐いて。

一緒に行動している人も、よく遊びに来る人も、そんなふうな対象はなかなか、と悩ましげにつぶやき。

相手が見つかったらぜひ見たい、というアーシェさんの希望を聞くと、アムルはまじまじと見つめてきます。
しばらくそうしてから、へにゃ、と口元がゆるみました。

わたしのお母さまも、同じことを言いましたと、少し嬉しそうに言うのでした。

　
　　　　　　右手に、魔術力場を形成した。

　
　　　　　　興味深そうに手に取った。

　
　　　　　　静かに笑って、右手に魔術力場を形成した。

　
　　　　　　ふっと笑って、緋色の力場を手に取った。