魂などない。


意識はある。


魂など、ない。





意識は魂ではない。


意識は殆どの生き物が持つ。
犬も、虫も、人も、エンブリオも。
手を動かしたいなと思うとき。
背中を掻きたいなと思うとき。
お腹が空いたけど我慢しようと思うとき。
こいつは苦手だから避けようと思うとき。
今は何もしたくないなと思うとき。
意識がある。

でも、それは魂ではない。


意識は、ただ、容れ物に注がれている液体だ。
容れ物が壊れたら形を保てない。
器の形を保っていた液体は地面に醜くこぼれ落ち、蒸発する。
肉体が壊れたら意識は保たれない。

ゆえに魂など無い。


「だからね、ナイトスピリット。君は亡霊でもなんでもないし、こうして契約出来ているのだから、根本的にエンブリオという生命体なのだよ。生き物だ。だからお前に名前をやろう。誰にもお前を魂だとか幽霊だとか呼ばせやしない。さあ、この鍋に飛び込むといい。混沌の果て、原初のスープとかき混ぜて、全ての始まりに戻りなさい。そしてまた私がいくらでも形作ろう。元の発光したような紛らわしい姿でもいいし、甲冑の姿でもいいし、そのままでもいいのだ。ただしその形に君は少なからず左右される、運命を――」

＿人人 人人＿
＞クマに注意 ＜
￣Y^Y^Y^Y￣

(氷漬けにした、大きなげそを差し出す―）

　

　

先日の『敗北』を思い出してか、少女の表情が曇る。

目を閉じ、呼吸を調えて神経を集中させる。
早口に異国の歌のような言葉を唱え始め。

ふわ、と風が彼女の周りにまとわりついた。
大鍋が魔女の前に立った。

　

(倒れたジャックオーランタンと向き合い―)

ｻﾞｯｻﾞｯｻﾞｯ（←マップを切り替える音）

魔女はのんびりとしている。