薄暗い牢屋の中、敵愾心を隠すこともせずに立ちふさがる相手に溜息を吐く。
　さて。隣のカレンちゃんをみると、こちらもどこか面倒そうだ。
　どうにも素直に通してくれそうにない相手に対し、こちらが取れる手段はまあ、ひとつだろう。
　無理を通そうとする事実に苦笑いを浮かべながら、そもそも今の己こそが無理を通した結果だったな、と息を吐いた。



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　ボクはとても、あたたかいところにいた。
　つつんでくれるぬくもりと、話しかけてくれるやわらかな声。この身体をいっぱいに満たす、あいという思い。

　　　大好きだよ、愛してる、あいたいね、幸せに。

　やさしい言葉だけが降りそそいで、ボクの心は、あったかくなる。
　ちいさなちいさな世界のなか、ボクの手が届く全ての世界が、やさしく、あたたかかった。
　だからこそ、それを守りたくて。
　ぬくもりを与えてくれたあなたに、何かをかえしたくて。



『だいすきだよ、■■■■』



　やさしくボクに語りかけていた声が、聞こえる。
　あの時とはちがう、たかく、たかく、聞きたくないような、声。



「――、――！！　――――っ、」



　どうしたのだろう？　なんだか、とても、いたい気がする。
　わからない、わからないから、見てみよう。
　はじめて目にするものに、ささやかに、ドキドキとしながら。



　そうして、初めて目にした世界は、まばゆく、赤く。



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　さぁ、生き延びるために、足掻いてみようか？