特段書く事もないのだが、今日はおれがこれまでに捕らえたもとい仲間にしたエンブリオ共について少々触れて行こうと思う。
　数が多いので、まずは苔坊と猫助について。




・第一のエンブリオ……苔坊

　いつの間にやらおれの背に自生した、知性のある苔である。
　自己主張し始めたのは割と最近の事であり、おれと同じ環境で育ったとは思えぬ程口が悪く粗暴な輩である。
　また、苔がおれの脳味噌と繋がっているようで、時折おれの体を好きに操縦する事がある。
　えも言われぬ不思議な気分になるが、奴とておれが居らねば生きられぬのだし、おれも奴が居らねば戦う力もないただの蛙と成り下がる。
　我々は共生関係にあるのだ。その相手を無碍には出来ず、最近は好きにやらせる事も多い。
　また、おれの契約エンブリオの中では一番の古株故か、他のエンブリオ達のまとめ役を任されているようで、我がエンブリオ共は苔坊の命令もすんなりと受け入れている。
　主としては少々複雑な気分である。




・第二のエンブリオ……猫助

　平原にて捕らえたケット・シーと呼ばれるエンブリオである。
　猫らしく好奇心に溢れており、しばしばおれの背の苔を構う他、おれが作った宝石の成り損ないのクズ石を玩具にして遊んでいる。
　その一方であまりおれ自身には懐いている訳ではないのか、こちらが近付いても反応を示さず、戦闘においても非協力的である場合が多い。
　『ギフト』と呼ばれるエンブリオがもたらす恩恵も、猫助からは得られていない。
　とは云え他のエンブリオがどんどんと増えていく中、自分があまりネクターを分け与えてもらえない事に不満があるのか、時折おれの背を軽く踏みつけにする。
　飼い主の機嫌がますます悪くなる事に気がつかないのだろうか。
　所詮は阿呆な猫である。
　とは云え、彼奴も古株の一員。今更捨て置くつもりは毛頭無い。だがネクターの配当は相変わらず少ないだろう。猫助には申し訳ないが。

蛙さんの舌先にぶらさがったまま偉そうに指揮をとる！！