この地方では寒暖の差はあまりないとはいえ、季節感がないわけではない。
唯一手入れの行き届いたこの庭も
ほんの少し、彩を変える。
「ああ、もうそんな季節か」
落ちた葉を踏みしめながら呟いた。
ヴルはその様子が珍しいのか庭を駆け回っている。
それはいつもの事なのだが。
落ち葉まみれになったヴルに呆れながら
「お前の色によく似ているな」
ひとつ、落ち葉を拾い手にとって見た。
くるくると指先で葉を躍らせる。
「少し、風も冷たくなったか？」

空を仰いだあと、視線を戻せば
葉にまみれたまま地に伏した赤い獣の姿。
首をかしげながらこちらを見ている。
隠れたつもりだろうか、その色の中に。
「落ち葉まみれだぞ、ヴル」
溜息を吐きながら体についた葉を払ってやる。
子供のような真似をして、と言葉を続けるが決して嗜めているわけではない。
あらかた綺麗にしたところでその体に自らの背を預ける。
ヴルも、特に気にすることもなく
一つ大きな欠伸をするとそのまま目を閉じた。

「温かいな」

見上げた空に紅が舞う。
すぐに冬がくるだろう、色々と準備をしなくては。

元気よく吠えると前足、主につ目の辺りを入念に毛繕いしている。
気合が入っているようだ。

兎は得意気に、矢継ぎ早にまくしたてた。
何故か褒めてもらえるものだと思い込んでるようだ。

傍に居たブチ兎は不意に頭を下げ、自身の小さな手でぱたぱたと頭を軽く払った。

綺麗にしたつもりなのか頭をあげると、小鳥をじっと見つめている。
どうやら以前のように頭の上に飛んでくるのを期待しているようだ。

単刀直入に聞かれたことに思わずどう答えていいか分からない。

どこか誇らしげに鳴くアズゥを見つめ、うーんと小さく唸った。

小首を傾げて可愛い声をあげるアズゥに、頬がほころぶ。

青年の口から紡がれる言葉を、一つ一つ受け取る。
時折驚いたような、何かを思うような表情を見せつつ
語り終えるまでしばし耳を傾け、一服し口を開く。

一拍置き、「誇りだ」と語った彼の瞳を思い出す。

領地のこと、両親のこと、現状、未来。
思った以上に沢山の話を聞かせて貰えた事がルレイルは嬉しかった。