現在俺たちは『枯れた土地』と呼ばれる場所にいる。
その名の通り乾ききった不毛の土地だが、ここにも襲いかかってくる生物はたくさんいる。
みょうちくりんなやつが多いのは他と変わらないが……。

いま俺の手には干乾びたクラゲがある。
そしてついさっき戦った相手には貝の姿をしたきものがいた。
貝もクラゲも、イメージとしては水場にあるものだ。
正確には水の近くにある砂地にあるような、というべきか。
もしかしたら。
今は『枯れた土地』という名こそあるが、かつては水に富んだ豊かな地だったのかもしれない。

凶悪な太陽に照りつけられ、広大な大地には無数にひび割れが走っている。
足元の土を拾い上げると、ぱさぱさとした感触と共に砂となって砕けた。

スッと手をかざしながら、太陽が赫々と輝く空を見上げる。
その日差しは確かにかつて甲板で浴びたものと同じかもしれないが……

おお、海の男がどうして乾燥した空気に慣れ親しもうか。
初めてと言える体験に、シーガルもすっかり辟易しているのであった。

デルフィニ？　文字通り茹ったよ。


＞ケンドリック

元騎士という庭師と戦い、惨敗を喫したのは記憶に新しい。
彼に勝つための景気付けというのであれば、さぞかし気分も乗るのだろう。
まぁ、それも無事にこの砂漠を抜けてからの話なのだが……

はて、この黒づくめの少女をどう量ったものか。
いやさ関係はあるまい。立ちはだかるというのだから、倒せばいいのだ、倒せば。
担いでいた銛を、軽く振ってから逆手に持ち変える。
銛を撃ち出すための構え。鯨捕りが誇りとする、戦の構えだ。

銛を素早く逆手に持ち変え、弓を引き絞るように右手は後ろへ左手は前へ。
深く腰を落とし、“漁”の構えを取った。