街にはしばし一揆交戦ムードでは無く、
ハロウィンのお祭りムードが流れていた。
他の世界にもこのお祭りがあるのにも驚いたが、
敵も味方も関係なく、切り替えが早いのにも驚かされた。

曰く、「一揆も敵対心と憎しみだけでは長続きしない」
曰く、「寒い冬にも打ち勝てる様に、こういう祭りは必要だ」

まぁ、そういうのも良いかもしれない。
二人はそう思った。
これから訪れるのは寒く厳しい冬なのだから。
ハロウィンとは、その冬の季節にやってくる悪霊を慰め、
その冬の間に悪さをしないようにと願う鎮魂の祭りだ。
一揆の最中に悪霊にも騒がれたら面倒くさくてかなわない。


そんな祭りの余韻に浸っていると、
冬の訪れを告げる精霊がこちらを見ている。
雪精霊（ジャックフロスト）。
冬の寒さと凍気を司り、時に人々にも牙を剥く陽気で残酷な冬の魔でもある。
…が、何か様子がおかしい。
とりあえず陽気なハズの雪精霊なのに、
そんなハイなテンションは全く感じることが出来ず。

なんかすっごい恥ずかしそうにしている様に見える。
無表情で顔だけじゃよくわからないけど。

そして、奇妙な雪の精霊と少しの間、
ちょっといびつな自己紹介の時間が設けられた。
それも終わり、そろそろ帰ろうか、という時

「一緒に来るか」との問いかけに一瞬の逡巡。
それでも顔を見上げて、

いつのまにか、何かを咥えている。