おねぇちゃんを呼び出すことに成功しました。偶然でしょうがなんでしょうが構いません。
今までそれだけを目的に野宿をし、戦いに耐え、歩いてきたのですから。

　呼びかける声、振り返る影。暗く深い水憂いの形。駆け寄り、

　ぴおの行動が止まります。視線も空ろなその形に、魂は見受けられませんでした。

ぴおの言葉が止まります。今口にしようとした言葉はなんだったでしょうか？
たすけて、そう言おうとしました。感極まって口にしたのがその言葉でした。
助けて？　今までずっと助けようとしていた相手に言う事がそれなんでしょうか？
何を言っているのか。自分でも分からない。違和感は頂点に達し、頭痛に膝を折れば。
もうそこに水憂いの器はかききえていました。ほんの一分も無いような邂逅。
ぴおが自らの限界を悟るに相応しい数十秒でした。
　涙を流しながら、膝を抱えてぴおは震えます。自分が自分で分からない恐怖と、無力感に苛まれながら。
言い用の無い吐き気、頭痛、記憶の混濁、慣れない生活による肉体的な消耗と相俟って今までで一番の苦境にありました。
初めて帰りたいと思いました。あんなところに。あんなところ？

　仲の良い両親、住み慣れた家、いつもの遊び場。友達、いたずら、おねぇちゃん。

何かが違う。覚えている？　思い出せない？　どっち？
無性に水に浸かりたくなりました。そこでたゆたっていれば、なんとかなるんじゃないかと、何故かそう思ったのです。

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今から九年前のお話。ぴおが九歳の頃のお話でした。

そう言いながら、ピサの斜塔のような角度で話し続ける。

そう言って彼はカバンからもう1個青りんごを取り出し、かじりついた。
どうやら食べるのにちょうどいい熟度のようだ。

食べたらアレは余裕で死ねるということを知っている彼は、そう心配そうに尋ねた。

そう言って彼は握手のために右手を差し出した。

ピチピチの200歳ちょっとである。

色々と思い出しながら、ピオに語る。

少なくとも見た目は小さい子だからだろうか。
心配そうな様子だった。

ちょっと気にしていたらしい。

砂地でのことを思い返す。あの暑さを思い返すだけで嫌になる。

返事が意外だったのか首を傾げながら問いかけます

うんうんと頷きながら感謝して。

けらけらと笑いながら褒めてるつもりのようです。

おにいさま、と言う言葉の響きに、思わず絶句してしまったようだ。
商売柄、人の目はさほど気にせずに生きてきた彼ではあったが、この年頃の少女に「おにいさま」と呼ばれている所を他人に見られた日にはどの様な視線にさらされるか、それを想像できないほど浮世離れはしていなかった。

もう少しで泣き出しそうな雰囲気すら感じる。あえて無視してもいいし、彼の世間体を考えてあげてもいいだろう。

一瞬触れ合ったおでこに手をやりながら、しばし思案の表情を浮かべた。ハッと気づき、すぐにぎこちなく笑顔を浮かべる。

相変わらずのコミュちから、とんちんかんな事を言い出したが、一応、あまり他人の内情に土足で踏み入るものではないだろう、と言う意図のもと、話を逸らしたつもりのようだ。

翠は理由がわからない中、撫でていた手をそっと下ろした。
一瞬後の彼女の言葉を聞いて、目をぱちぱちさせる。

翠は履いていた靴を脱ぐと、背丈は相手と同じ高さになる。

頭を貴女に差し出した。