――ギル＆チェリオ――



暗闇からうっすらとした光がさしてくる
重たい瞼をこじ開けて目を覚ますと、白いベッドの上だった
起き上がろうとするが、その途端体の節々に痛みが走り、
どうにもこうにもいかない


「…あ！起きた？」


ふと見える柔らかな茶色の毛並み
お日様にあたって黄金色に見える
ああ、綺麗だななどとぼんやり思っていると
ぴょこんと僕のおなかの上に乗り、
獣型のチェリオさんが心配そうに上から顔を覗き込んだ


「よかったあ！ギルくん、ずーっと目覚まさないんだもん、みんな心配したんだよー！」


嬉しそうにぴょこぴょこと僕のおなかの上ではねる


・・・


・・・痛い


・・・


「チェリオさん、い、…痛いです」
「あ！ああごめんんん！だって嬉しくって！」

ごめんよと笑いかけながらそっとベッドの端へチェリオさんは移動した

「マハちゃんは何か栄養のあるもの持ってくるって、出かけたよ！
カネちゃんはなんかぶつぶつ言いながらそれについてった！
ブチとシュリちゃんはお見舞いのお花摘んでくるーとか、
あ、あとハールさんは次の相手の偵察とかでヴルちゃんと一緒に
闘技場に出かけていったよ！」

「・・・どうやら僕が一番傷が深かったみたいですね」

「うん、ギルくんぼっこぼこだったもの！」


笑顔でそう言われると、どう答えて良いのかもよく分からず
自分が情けなく思えてくる


「でも、相手が悪かったんだよ、すっごい強かったし！みんな頑張ったよ！」





確かにそうだ、対戦表を見た時点で
かなりの力の差が見られた


でも
でももう少し


自分にもう少し力があればと…




「次の対戦ももう決まったよ、今夜ギルくんが目覚めたら、みんなで次の作戦練ろうって！」
「そうですか…」
「…」

ふと右手にふわっとした小さな暖かみを感じた
チェリオさんの手だ

「そんな顔しない！次は大丈夫！」

・・・
自分はどんな顔をしていたのだろうか
きっとこれまた情けない顔をしていたに違いない


「え・・・」
「ふふー！ほらほら！乱れた七三を直すのだ！そしてご飯を食べて次の戦いに備えるんだよ！」
「うわ！また！？」
「ほらほら〜し〜ちさ〜ん」

髪をくしゃっと乱しながらも
きっと僕を元気づけてくれてるんだと思う


さあ、２回戦だ




次はもっと、もっと・・・

無邪気な少女に心なしか表情も緩む

ギルザの視線に気づき、視線を合わせる
***
そして闘技大会初戦を終え、再びギルザと会った

世間というものは狭いな、としみじみと語られる。

「その髪型はあれか、３人とも何故そうなった」

ハールは少々言いよどみながらギルザに聞いてみた。

少年の言葉にきょろりと身辺を確かめると、自身の服に付いたてんとう虫に気が付いた。

必死に顎を引きながら、小さく動くてんとう虫をキラキラとした瞳で見つめている。

虫に近い方の手を上げると、七つの星はよじよじとそれを上っていく。
ブチ兎は虫が飛び立つ瞬間を楽しみにしているようだ。